″ヒーロー″−4
「帰って来たぁぁ!!ヤツらが帰って来たァ!!」
寮に帰ると、もう夜になっていたこともあってか、A組総出で出迎えてくれた。学校で色々と手続きなどをしていた関係で、灯水は緑谷、切島、蛙吹、麗日とインターン組全員で帰って来たのである。
峰田の騒々しい声とともに、わらわらとクラスメイトたちが集まってくる。
口々に心配の言葉を述べながら駆け寄ってくれる仲間たちに心が落ち着く。せわしなかった感覚がなだらかになるようだった。
葉隠が蛙吹と麗日に抱き付き、上鳴が切島と緑谷にまたも巻き込まれた2人を心配する。それを制するように、飯田が声を張り上げた。
「皆心配だったのは分かるが!!落ち着こう!!報道で見ただろう、あれだけのことがあったんだ。級友であるなら彼らの心を労わり休ませてあげるべきだ。体だけでなく、心もすり減らしてしまっただろうから…」
飯田はそう言ってくれるが、灯水としてはこのA組の感じにホッとする。緑谷も、昼間のあの暗い様子ではなくなっていた。
「飯田君、ありがとう。でも、大丈夫」
その表情と瞳は、きちんと落ち着いて、自分である程度の整理をつけたのだと分かるものだった。飯田もそれを理解したのか、しばらく固まると、「じゃあいいかい」と許可を取って来た。
「とっっっっっても心配だったんだぞもう俺はもう君たちがもう!!!」
「おめーがいっちゃん激しい」
そして飯田が最も激しく心配の気持ちを伝えると、いつも通り瀬戸がツッコミを入れる。そんな委員長の横で、八百万がハーブティーを淹れると言ってぷりぷりと動き始めた。
それを見ながら、横で麗日がぽつりと漏らした。
「私…救けたい……」
見つめる自身の両手は、治アを拘束するまでナイトアイを抱えていた。麗日もまた、自分にできることがあったのではないかと思い悩むようだった。蛙吹が心配そうに見つめ、切島も同じく共感するように見た。
「…俺もだよ、麗日さん」
それには灯水も答えた。小声のものだったが、麗日や蛙吹たちには届いたようだ。包帯が巻かれた右腕を見ると、麗日が小さく、しかししっかりと頷いた。
「灯水」
そこへ、低く綺麗な声がかけられた。間違えるはずもない、焦凍だ。顔を上げて焦凍を見ると、黒いタートルの服を着ている。
出迎えてくれたA組に心が落ち着いた。そして何よりも、焦凍の姿を見て、一気に安心するのが分かった。いつだって焦凍が一番、灯水の心の近いところにいる。
ふら、と灯水は焦凍の方へ一歩踏み出すと、その腕の中に飛び込んだ。
「……ただいま」
「おかえり。心配した」
抱き込まれた瞬間に香る焦凍の匂い、温もり。耳元で響く低い声。報道以上のことは喋れないが、焦凍は灯水の凪いだような心境を、しっかりと理解してくれていた。
「俺も明日は仮免補習なんだ。もう部屋に戻ろう」
「うん、っ、え、」
それに頷くと、おもむろに焦凍は灯水を抱き上げた。お姫様抱っこというヤツである。思わず驚いて変な声が出た。
周りのA組メンバーもどよめく。
「ちょ、焦凍何して、」
「お前足怪我してんだろ。歩きにくそうにしてる」
「まだここに着いてから5歩も歩いてないけど!?」
「それだけありゃ十分だ。ほら、行くぞ」
「あはは、轟王子様みたーい」
芦戸がけらけらと笑う。焦凍は怪我をしている灯水への配慮をしているようだが、衆人環境でこんなことをされて、消沈していた心など吹っ飛びそうだ。
下ろす気のない焦凍に早々に諦めた灯水は、とりあえず緑谷たちに手を振った。
「あー…おやすみ、皆」
それにクラスメイトたちから「おやすみ〜」と返されて、焦凍は灯水を抱えたままエレベーターへ向かう。ここが寮だからまだマシだが、学校でやられたら羞恥で死んでいた。
そう思いつつも、焦凍の温もりを感じているこの状況にドキドキとしている自分がいるのも分かっていた。