英雄の学び舎−10


核兵器を置くのは3階の部屋。もっと上の階の方が、という提案も出たが、なるべく下の方がいい。
そして尾白と葉隠は核兵器の部屋に待機し、灯水が2階の階段付近に待機だ。階段を下りる前、灯水は尾白の足元に氷を張った。


「これ、尾白君の足は凍ってないから」

「本当だ」


足の形の氷と言っていい。その空洞に足を差し込めば、パッと見、尾白の足が凍っているように見えるだろう。


「葉隠さん…は、うん、もう取ってくれたんだ…」


グローブと靴を脱いでもらうよう言おうとしたら、すでに脱いでいた。正真正銘、全裸である。


(透明人間としては正しいけど…)

(女子としてはやばいよ倫理的に)


尾白と灯水はアイコンタクトでそう会話した。
ただ脱いでくれたのなら話は早い。尾白には悪いが、少し耐えてもらおう。


「葉隠さん、尾白君の背中に掴まっててもらえる?」

「え!!??」


驚いたのは尾白の方だった。葉隠は「いいよ」と即答である。見えないとはいえ全裸の女子を背中に、と慌てる尾白。こいつは童貞だ。


「よし、これでおっけー!」

「あ、なるほど…よかった…」


葉隠は尾白のベルトに足をかけ、肩に掴まって体が触れないようにしているようだった。尾白の反応からしてそうだと分かる。さすがに葉隠も触れるのは抵抗があるらしい。

離れたところに葉隠の靴と手袋を放っておき、こちらのスタンバイは終わる。


「下で戦闘音が聞こえたらこれを投げて室内に蒸気満たして」


最後に葉隠に手榴弾を渡すと、投げる位置を指す。近くで爆発すると危険なためだ。頷く2人に頷き返した。

そのまま2階に降りると、階段付近に立つ。背後には3階へ続く上り階段。


『では第2回戦、スタート!!』


インカムからオールマイトの声が響く。ついにスタートだ。同時に、灯水は体から勢いよく蒸気を噴き出した。階段に座って両手両足から出した最大出量の蒸気によって、2階を中心に1階と3階も蒸気に包まれた。白い靄が漂う廊下。

その次の瞬間、ビルが丸ごと凍り付いた。一瞬で氷が床や壁を伝い、窓も柱も何もかもが氷に包まれる。灯水の足も氷に閉ざされた。ここまでは予想通りだ。一気に冷え込んだ空気によって、蒸気が少し濃くなる。


「いってー…」


少しでも動かせば痛みが走るが、熱湯を噴き出すことですぐに溶かす。その間に、階下に向かって手榴弾を投げ、さらに蒸気を蔓延させた。

そして氷が解け切ると同時に、階段から紅白頭が姿を現す。手榴弾によって灯水が動けると認識して警戒した焦凍が、ゆっくりと上がって来たのだ。これで急がれては氷から逃れられなかった。


「やっぱお前か、灯水」

「焦凍が来ると思ってたよ。事実上俺とお前の一騎打ちの訓練なんだから」


思ってもいない言葉を言えば、焦凍は「そうだな」と小さく首肯する。それと同時に、一気に間合いを詰めてきた。手から氷が発せられる。

すぐに蒸気でその場を動き、足で氷結を発生させて焦凍のそれにぶつけた。とても氷が出しているとは思えない、ゴンッという轟音とともに氷が激しく衝突した。階段のほぼ全面が埋まって焦凍が見えなくなった瞬間、焦凍の攻撃の第2波がやってくる。避けきれず、灯水の下半身が氷に閉ざされた。


「うお…」

「…悪いな、灯水。すぐ溶かしてやるから待ってろ」


焦凍はそう言うと、急ぎ足で上階へ上がっていった。思っていた通りのことを言うものだから、灯水は思わず苦笑する。


(ほんと、ぶれないな)


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