USJの試練−8


相澤が交戦しているうちに生徒たちを逃がそうと13号がA組を率いると、目の前に突如として黒い靄が出現した。一瞬で姿を現したことに驚いて全員立ち止まる。


「初めまして、我々は敵連合」


靄は上部が人の頭のような形状を成しているように見える。首らしき部分には鉄の覆いがあり、頭らしい部分の靄は目が不気味に光っていた。


「僭越ながら、この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは…平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思ってのことでして」


丁寧な口調ながらその語ることは、ある意味思ってもみないことだった。あの絶対的正義であり絶対的強さであるオールマイトを、倒そうなどという発想がもう普通は思い浮かばないはずなのだ。


「本来ならここにオールマイトがいらっしゃるはず…ですが、何か変更があったのでしょうか?まあ、それとは関係なく、私の役目はこれ…」


靄を一気に広げて臨戦態勢になった敵に、13号が指の蓋を開く。あそこから万物を飲み込むのだ。
しかし、それより先にその前に2人の生徒が立ちはだかった。切島と爆豪だ。切島は硬化した腕で思い切りパンチを、爆豪は爆破を繰り出した。靄は見た目通りの気体的動きでそれを無効化する。


「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」


切島がそう怒鳴ると、後ろにいた13号が焦って制止の声をかけたが、靄は止まらず広がる。


「だめだ2人とも!どきなさい!!」

「危ない危ない、そう、生徒といえど優秀な金の卵…」


散らして、殺す。
そんな声が聞こえるか聞こえないかのうちに、あたりは靄に包まれた。あまりにも一瞬で暗くなったが、咄嗟に焦凍と灯水は後ろに飛びのく。離れたところで、飯田と障子が近くにいた生徒を靄の外へ連れ出していた。


「間に合わないっ、」

「灯水!」


蒸気を出そうにも、靄の方が圧倒的に早い。同時に飛びのいた焦凍がすぐ側に来ると、ついに何も見えなくなった。



***



「…やりすぎた?」

「いいんじゃねぇか、全員仕留めた」


恐らくワープの個性だろう靄と、散らして殺すという言葉に、事前に見えていた施設内に散らばった敵たち。それらを組み合わせれば、各ゾーンに生徒をワープさせて待ち構えていた敵に殺させるというのが簡単に思いつく作戦だ。
それならば、ワープと同時に個性を発動すればいい。

飛ばされている最中にそこまで考えた灯水は、着地と同時に最大限ぎりぎりの力で氷をあたり一面に張った。そのあとにどのゾーンか認識したほど、同時に発動してやったつもりである。

ここは土砂ゾーン、土砂災害によって町が埋もれた設定の場所のようだ。そして、そこに待ち構えていた敵はすべて氷結に閉じ込められていた。


「焦凍と同じと分かってたら個性使わなかったのに」

「氷に関して言えば灯水のがつえぇだろうが」


まさか焦凍と同じところに飛ばされるとは思っていなかったため、焦凍も同じことをしていた。そのため、2人分の力でこのゾーンはほぼ全域が凍り付いていた。
実は、炎が出せない分灯水は氷だけなら焦凍よりも少しだけ強い。焦凍よりも広範囲を凍らせたが、焦凍がこの規模でやれば少しの間霜が降りて動けなくなるだろう。


「…散らして殺す、か。言っちゃ悪いが、あんたら「個性を持て余した輩」以上には見受けられねぇよ」


焦凍は本題とばかりに、凍り付いた敵の1人に近づいた。灯水は後ろでそれを見守る。


「こいつら、移動してきた途端に…!本当にガキかよ…いってててて…」


No.2ヒーローの子供なのだ、そりゃあ普通のガキなわけがない。痛みに呻く男たちは、焦凍の言う通り「普通の敵」だ。とても、オールマイトを倒すための精鋭には見えない。おそらく、ひときわ強い殺気を放っていた手首男や靄が中心的人物で、そいつらを含む数人がヤバイやつだろう。


「なぁ、あんたらこのままじゃじわじわ体が壊死してくわけなんだが…俺もヒーロー志望、そんなひでえことはなるべく避けたい。あのオールマイトをやれるっつー根拠、策ってなんだ?」


敵顔負けの脅迫をかます焦凍に少し引いてしまった灯水だった。


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