USJの試練−9
その後、焦凍の尋問が続いたが、あまり有益な情報は得られなかったようだ。舌打ちをついて焦凍は戻って来た。
「あのヤバそうな奴らがやるってことしか知らねぇみてぇだ」
「ほんとに下っ端なんだね。生徒相手にさせるための捨て駒か…生徒をオールマイトの動きを制限するための人質にでもするのかな」
「邪魔者を一か所にとどめておくだけかもしんねぇぞ。なんにせよ、奴らが本校舎の方に行ってねぇのは確かだな」
どうやら捨て駒らしい敵たちは使い捨てで、そこらへんの敵と変わりなかった。本当に強敵なのは、やはり数人のようだ。だがそうは言っても、人質として生徒が捕まればオールマイトも自由に動けなくなるかもしれない。
「敵の腹積もりがなんであれ、俺や焦凍みたいに攻撃や移動に秀でた個性じゃないやつもいる。ちょっと心配だな」
「そうか?雄英に入っただけ、これぐれぇなら相手できる実力はありそうだけどな」
珍しく他の生徒たちを認めるようなことを言う焦凍を意外に思う。眼中にないとも思っていたが、視界の端くらいには捉えているらしい。
「俺もそこまでは心配してないけど、火災ゾーンとか水難ゾーンはそもそも場所がもう普通の人間には不利だ、そこで敵との戦闘は苦しいんじゃないかな」
「…そうだな、それは一理ある。でもどうすんだ」
「あ、あのさ!」
そこへ、今までまったく気づかなかった者の声がした。振り返ると、グローブが浮いている。葉隠だ。
「うわ、葉隠さん!危なかった、凍らすとこだった」
「ほんとびっくりしたよー。それより、私も他の皆は心配!一応確認しに行こうよ」
「そうだね、俺もそう思う」
大丈夫そうならそれでいい。時間も限られている、まずは危険なゾーンだけでも確認するべきだ。
「じゃあ俺と葉隠さんで手分けしよう。焦凍はここの奴ら処理して欲しい」
「あぁ。俺はそのあと、一応中央の方に近づいてみる。オールマイトが来たらあそこに向かうだろうからな」
「了解。じゃあ葉隠さんは水難ゾーンお願い、見えないから気づかれないはず!俺は火災ゾーン見てくる」
「ラジャー!」
葉隠はびしっと敬礼すると(そう見えた)、広場を挟んで反対側の水難ゾーンに走り始めた。透明だから敵たちには気づかれないだろう。灯水は水難ゾーンの噴水広場を挟んで反対側にある火災ゾーンへ行くため、足から蒸気を噴き出した。さすがに飛ばず、地面すれすれを滑るようにして移動する。
焦凍は、このままだと本当に凍死してしまう敵たちを別の方法で拘束するべく、その処理を始めた。
***
3分ほど走って火災ゾーンに到着する。途中、山岳ゾーンからは大きな電気の放電が見えたため、上鳴が交戦していることが分かる。気になったが、今は火災ゾーンが先決だ。
「あの中に入って走り回るのは愚策だよなぁ」
いくら探すと言っても、あの中に突入しては敵の思うつぼだ。大方、炎系の敵がいるはずだ。こちらに不利である。
「…ちょっとバレるのが心配だけど…この火災なら大丈夫、か…?」
熱された空気は上空へ向かって動くため上昇気流となる。つまりこの火災ゾーンも、上空に向かう風が発生している状態だ。これなら、蒸気によって高いところまで飛んでもさほどエネルギーを使わないで済む。
「っし、行くか」
そう勢い込んで一気に蒸気で空中に躍り出ると、火災ゾーンの直上に出る。途端下から熱気が押し寄せてきた。コントロールが難しく、バランスを取りながら下に目を凝らした。誰かA組がいないか見ているのだ。
「…っ、あれは、尾白君!」
すると、火災に包まれた町の通りのひとつに、尾白の姿が見えた。あの火災の中、ひとりで敵と交戦している。周囲にはすでに倒された敵が転がっていた。さすが、尻尾が生えているだけという個性でここまでやって来ただけある。加勢するべく、灯水は蒸気を噴出して尾白のところへと舞い降りた。