USJの試練−14
蒸気で移動して焦凍の側に降り立つと、オールマイトは緩んだ拘束から抜け出していた。
「くっそ!いいとこねー!」
「や、切島君のおかげで凍らせられたよ」
切島の攻撃のおかげで灯水の軌道に手首男が乗ったのだ、偶然とはいえ連携できてファインプレーだった。
「スカしてんじゃねぇぞ、モヤモブが!!」
「てめぇらごときに、平和の象徴は殺れねぇよ」
爆豪、焦凍もそれぞれモヤ男と脳みそ男を拘束した。ほぼ同時に駆けつけることになったのは偶然だが、それが功を奏した。
「焦凍、火災ゾーンも水難ゾーンの方も無事だった」
「そうか、それならよかった」
「え、あの爆発お前だったのか」
切島は火災ゾーンの爆発の正体を知って「すげぇな」と漏らす。
一方、爆豪は敵のようにモヤ男を押さえつけた。
「怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐ爆破する!」
「ヒーローらしからぬ言動…」
「人質取ってる敵みたい…」
切島と小声で言い合っていると、手首男はゆらりと自身を拘束する氷に触れて破壊した。かき氷のように粉末となった氷から出ると、こちらを睨みつけた。
「攻略されたうえに全員ほぼ無傷…すごいなぁ、最近の子供は。恥ずかしくなってくるぜ敵連合」
手首男は脳みそ男の方を見て冷たく言い放つ。
「脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入り口の奪還だ」
脳無というらしい男は答えずに、ゆっくりと上体をワープから戻して立ち上がる。その際、氷を強引に解いて体ごと壊していた。体の半分が氷ともに崩れているのに、震えながら不気味に佇んているのだ。
その異常な姿に、オールマイトは「下がれ!」と生徒たちを下がらせる。
「なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」
「別にそれだけとは言ってないだろう…これは超再生だな…脳無はお前の100%にも耐えられるよう設計された超高性能サンドバック人間さ…!」
それはつまり、人造人間、もしくは改造人間ということだ。倫理なんて欠片もない。おぞましい怪物は、一瞬で爆豪に迫る。それに負けずにオールマイトもその前に立ちはだかったかと思うと、すさまじい爆風が吹き付けた。
あまりの風に飛ばされそうになり、咄嗟に背後に氷の壁を造った。緑谷は尻もちをつき、切島と焦凍もバランスを崩している。
「かっちゃん!!…かっちゃん!!??」
緑谷は吹き飛ばされたかのように見えた爆豪の名前を呼ぶが、直後に爆豪が隣にいることに気づいた驚いてまた名前を呼んだ。おそらくオールマイトが庇いつつこちらに投げたのだろうが、まったく見えなかった。
オールマイトは元いた場所から10メートルほど離れた場所まで飛ばされていた。それでも立った姿勢を維持し、地面にはオールマイトの両足の跡がコンクリートを抉って残っている。
「ゴホッ…加減を、知らんのか…」
「仲間を救けるためだ、仕方ないだろ?さっきだって、ほら、そこの、地味なやつ、あいつが俺に思い切り殴り掛かろうとしたぜ?他がために振るう暴力は美談になるんだ、そうだろ?ヒーロー?」
特に仲間だと思っているわけでもないだろうに、白々しく言う男は、なおも大仰に話し続ける。
「俺はなオールマイト!怒ってるんだ!同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まる、この世の中に!何が平和の象徴!!所詮抑圧のための暴力装置だお前は!暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで世に知らしめるのさ!!!」
「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの。自分がただ楽しみたいだけだろ嘘つきめ」
「バレるの、はや」
暴力装置、それは国家権力のもと国家の秩序を維持するのための機能を指し、警察や軍がそれにあたる。聞こえは悪いが、暴力装置がなければ人々は法を守ろうとしない。力のない法に意味などないのだ。人類が法という秩序を持つためには、暴力装置は必要不可欠だった。成熟した法治国家の時代が続いた前超常時代はそのような意識は薄れていたが、個性の発言によって秩序が乱れた現代、再び暴力装置が法に力を持たせる役を負っているのである。
手首男の言うことは、人類の歩みを無視したまったく暴論なのだ。そもそも、表向きに言っているだけであったようだが。