USJの試練−15
くだらない会話は終わりだ。所詮、なんのイデオロギーもないただの狂人の集まりだ。
「ワープ押さえれば何とかなるか…?」
「3対6だ、こっちのが優勢だろ」
灯水が勝算を窺うと、焦凍も構えて臨戦態勢になる。緑谷もこぶしを握った。
「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!」
「とんでもねぇやつらだが、俺たちでオールマイトをサポートすりゃあ、撃退できる!!」
切島、爆豪も構えるが、そこにオールマイトの腕が伸びた。
「だめだ!逃げなさい」
あくまで1人でやろうという姿勢に、焦凍は納得いかなさそうにして構えを深くする。
「さっきのは俺がサポート入らなけりゃやばかったでしょう」
「オールマイト、血…!それに時間だってないはずじゃ…あ、」
「それはそれだ轟少年!!ありがとな!しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!!」
緑谷が言いかけたことが気になったが、オールマイトから漏れ出てくる闘志にそのようなことは気にならなくなる。プロの本気。平和の象徴の、100%だ。
「脳無、黒霧、やれ。俺は子供をあしらう」
手首男は脳無と黒霧というらしいモヤ男に指示を出した。向こうは灯水たちとも交戦するつもりのようで、否応なしに灯水たちも構えを解くわけにはいかなくなった。
「クリアして帰ろう…!」
男がゲームのように言ってこちらに一気に間合いを詰めてくる。やるしかない、と覚悟を決めようとした、その瞬間。
オールマイトの気迫がピークに達して、一瞬風のように感じた。それだけのエネルギーが辺りにあふれ出て、手首男ですら気圧されて飛びのいた。
オールマイトは脳無にまっすぐ殴るかかると、脳無の拳に自らの拳をぶつけた。骨と骨がぶつかる重い音が響き、今度こそ衝撃波が走った。
「ショック吸収って自分で言ってたじゃんか」
「そうだな」
短くそう言うと、オールマイトは脳無と激しいパンチの応酬を繰り広げ始めた。目にもとまらぬ速さで両者の殴打が続き、その衝撃波が断続的に放たれて近づくこともできやしない。
「無効ではなく吸収ならば!!限度があるんじゃないか!!??」
互いの拳が互いの腹、腕、腰、胸、顔に当たり、その度に衝撃が風となって辺りに吹きすさぶ。ただの殴り合いという原始的な戦いなのに、オールマイトというだけで威圧感が物理的に感じ取れるかのようだった。
「私対策!?私の100%を耐えるなら!!更に上からねじ伏せよう!!」
オールマイトは血を吐いている。さすがに強敵を前にいつものような余裕は見せていない。だが、その拳から放たれる風圧は、灯水たちの髪を、池の水面を、周囲の木々を、たなびく煙を、すべてを揺らしてねじ伏せる。すべてのものが、圧倒的強者に跪いているかのようだった。
「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!!敵よ、こんな言葉を知っているか!?」
そして、特大の一振りが脳無の腹に放たれる。一瞬、オールマイトの口からこぼれた血が空中に残像を残す。脳無はその一発が当たる前から、もう動けなくなっていた。
拳が、脳無の腹にストレートにめり込む。その次の瞬間、脳無は眼球では追えない速さで空に吹き飛ばされる。
「PLUS ULTRA!!!!」
脳無はドーム状の天井にぶち当たると、ガラスを一斉にぶち抜いて屋外へと吹き飛ぶ。さらに、そのまま空の彼方へと飛び出し、雲すら吹き飛ばして見えなくなった。
ぶち抜かれた天井から直接陽光が差し込み、砂埃が風に揺れる。
脳無のショック吸収をないものにして、強引に吹き飛ばす。
これが、プロの本気なのだ。