燃えろ体育祭/前編−7


ランプが順々に消えていく。それにともなって、生徒たちの緊張もピークに達していた。そして、最後のランプが消える。


「スタート!!!」


ミッドナイトの号令と同時に、一斉に生徒たちがゲートの先へ駆け込んだ。途端にすし詰め状態になって混乱する廊下。ちらほらとA組も見えるが、皆一様に前方を警戒していた。


「バレてるよ焦凍」


焦凍は見ていなくとも、皆は焦凍のことを見ている。灯水以外にも、その考えは筒抜けだった。
灯水はゲートの手前で突っ立ったままだったのを、足から蒸気を噴出してあっという間に廊下の上部へ突入する。眼下で押し合いへし合いする生徒たちの上を通り過ぎた灯水の後ろには、蒸気の白い煙が立ち込めて悲鳴が上がった。
そこへ、前方から冷気と圧力。あっという間に、前方一帯が氷結されてしまった。

そこを飛び越えれば、もう灯水は2番手に浮上する。


『さーて実況していくぜ!解説アーユーレディ?ミイラマン!』

『無理やり呼んだんだろが』


会場から外へも聞こえてくるアナウンスは、プレゼントマイクと相澤の声だった。どうやらこの2人が解説担当らしい。相澤はキレていた。


「甘いわ轟さん!!」

「そううまくいかせねぇぞ半分野郎!!」


灯水が蒸気によって焦凍に追いついて足で走りだすと、後ろからA組のメンバーが迫ってきていた。全員氷結を免れている。


「やっぱA組メンバーが厄介だね」

「A組連中は当然として、思ったより避けられたな」


並走する焦凍に声をかけると平然と返される。どうやらA組を止められるとは焦凍も思っていなかったらしい。
すると後ろから峰田の高い声が降って来た。


「轟の裏の裏をかいてやったぜざまあねぇってんだ!くらえオイラの必殺…」


峰田のもぎもぎは当たったら終わりだ。わりと危険視しているそれが降ってくるかと身構えた瞬間、峰田の体の横から突然何かが衝突した。


『さあいきなり障害物だ!まずは手始め…第一関門、ロボ・インフェルノ!!』


焦凍と同時に立ち止まり、目の前に立ちはだかる巨大なロボットを視界に収める。大きさはざっと30メートルはあるだろう。戦闘ロボットが、コースが幅200メートルほどに拡張された区画にところせましと並ぶ。どうやら、障害物の度にこのようなステージが設けられているようだ。
周りの生徒の驚きの声を聴く限り、あれは一般入試の仮想敵らしい。


(律儀に戦うのはタイムロスな上後続に有利、ここは最大限避けるか)


灯水はそう判断すると蒸気の出力を強めに出して舞い上がる。焦凍が視界の端で戦闘態勢に入ったため、その目線の先の中央を避けて左側に向かう。
直後、焦凍が放った氷結によってロボットが丸ごと凍り付いた。すぐ右側の巨体が氷に閉ざされ、すぐにギシギシと鳴り始める。


「意図的か偶然か…意図的なんだろうな」


えぐいな、と思った瞬間、ロボットは不安定な体制のまま動きを止めたためバランスを崩し、地面に向かって盛大に倒れた。土埃と氷の破片が飛び散り、轟音と悲鳴が響く。


『1−A轟弟!攻略と妨害を一度に!こいつぁシヴィー!!その横でしれっと飛んでんのは同じく1−A轟兄!あれだな、もうなんか…ずりぃな!!』

「ちゃんと戦いますよーっと」


あたかもセコいかのように言うものだから、灯水は目の前のロボットに標的を向ける。もともとこのロボットだけは倒さないと、さすがに突破できない。こいつを倒してすぐに蒸気で出口へ向かえば、後方を走っている焦凍に追いつくだろう。


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