燃えろ体育祭/前編−8


コースを外れないように飛びながら、眼前に迫るロボットの上に飛ぶ。何かミサイルのようなものでも撃って来たがすべて躱すと、四角い頭の上に着地する。このまま抜けられればいいが、このロボットや周囲のロボットの攻撃範囲に入り続けたままではろくに飛べない。
灯水は平らな装甲に手を置くと、覚えたての技を使うことにした。あのエンデヴァー人形にヒントを得た、水による腐食。学校で散々試したので、数秒でこのロボットの基盤を破壊できるだろう。

意識を両手に集中させ、高温高圧での水の噴出を描く。すぐには出さず、貯めて、そして、一気に噴出。
ジュワ、という鋭い音とともに、異様な匂いが漂って息を止めた。すぐに装甲の感覚がなくなり、ロボットが急速に動きを遅くする。そして、突然すべての電気系統が失われて電源が落ちた。がくりと機体が傾き、すぐに灯水は飛び立つ。

そのままこのロボットの攻撃範囲だったところを抜けてこのステージの出口へ向かえば、背後で地面にロボットが崩れ落ちる轟音が空気を振動させた。


『ここで轟兄もロボットを攻略!ってなんだありゃ、溶けてるーー!?あの装甲ごと中枢を溶かしてロボットを無効化!いったいなにしたんだあいつー!?』

『今ゴグった。あれは超臨界水だな。なんかよく分からんが、気体と液体の中間の状態を維持した特殊な状態の水で、金をも溶かすらしいぞ』

『ゴールド・メルター轟!!訳わかんねぇ!!』

「こっちのセリフだわ」


灯水は着地すると、凍結しかけた足と手を温めながら走り始める。すぐ横には焦凍もいて、ステージを抜けてもとの細いコースとなった道を進んだ。


「何したんだお前」

「溶かした」


焦凍は要領を得ない回答にため息をつくと、視線を前に戻した。

解説の2人がよくわかっていなかったように、灯水も詳しくは分からない。
だが、水を一定の高圧高温の状態にすると、臨界点というのを突破する。その状態を超臨界状態という。超臨界水は液体と気体の中間の様相を成し、どちらとも区別がつかない。そして極度に強い溶解性を持っており、金や超合金などのあらゆる金属や、ちょっとやそっとじゃ壊れない物質や分子の分解も可能である。
だが万能の技でもない。そもそも臨界点を突破している状態を維持することが難しいため、いざ手から超臨界水を出しても30センチも離れれば気体か液体に変化してしまう。先ほどのような限られた場面でしか使えない代物だ。


「後ろも結構突破してる、そこまで引き離せてないな」

「第一関門なんてそんなもんだろ」

「チートは言うことが違うね」

「そっくりそのまま返す」


そんなことを言いながら走っていると、正面が開けてくる。よく見てみると、大きな谷に僅かに柱のように地面が残っている地形が広がり、その地面の間にロープが渡されていた。綱渡りのようだ。さっと辺りに目を光らせるが、妨害はない。


『おいおい第一関門ちょろいってよ!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォーーーーール!!!!』

「じゃ、俺左ルートね」

「おう」


どういう構造が分かってしまえば止まる必要すらない。灯水は左側のロープから、焦凍は右側のロープから先へ進むことにした。焦凍は止まらずにロープに乗ると、氷結によって足を滑らせて進んでいった。灯水は蒸気で跳躍して次の地面に向かう形だ。この谷ごと蒸気で進むと体力を使いすぎてしまう。ただでさえ超臨界水で体力を使ったし、このあとすぐに第2種目だ。体力の温存をそろそろ意識し始めるべきである。
5,6回跳躍すればすぐに対岸に着いた。ほぼ同時に焦凍もロープを凍らせて到着する。すると、後ろから「くそが!」という罵声と爆音が聞こえてくる。爆豪が追い上げてきていた。爆発によって体を浮かせて飛んでいる。


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