燃えろ体育祭/前編−9
『さあ先頭は難なく一抜けしてんぞ!到着のタイミングが一緒とかさすが双子だな!』
2人でやはり並走していると、そんな実況が聞こえてくる。後ろの方はかなり団子状態らしい。ほとんどがA組のメンバーだろう。コースを進んでいくと、ついに最後の関門に差し掛かる。一見、だだっ広い何もない空間だ。
『そして早くも最終関門!かくしてその実態は…一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!!地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!目と足酷使しろ!!』
言われてみれば、地面には丸い跡がついている。地雷の埋められてあるところだろう。それが無数に並んだ地面を走るには、集中力が必要だし時間もかかる。
ここは一気に飛ぶべきか、しかしこのあとを考えると。とりあえず迷う前に走り始めることにした。焦凍の横で慎重に進んでいくと、後ろで早速爆発が起こる。威力は大したことないが、時間のロスは避けられない。
すると、地雷とは違う小規模な連続した爆発音が近づいてきた。まさか、と焦凍と後ろを振りかえると、案の定爆豪だった。
「はっはあ!俺には関係ねー!!てめぇ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!!」
『ここで先頭が変わったーー!!喜べマスメディア!お前ら好みの展開だ!!』
灯水と焦凍2人を追い越し、爆豪が先に出る。舌打ちをつくと、焦凍が早速妨害に出た。腕を凍らせようとしたり、爆豪が爆破の風圧を焦凍にかませようとしたり。その一歩後ろにぴったりくっつく形で灯水は走っていた。
爆豪に抜かされたことは素直にむかつく。だが、足や手の凍結を温める余裕もないほどには個性の使用を控えたい状況だった。やはり超臨界水が大技過ぎたようだ。この順位で2回戦に進めないはずがないので、ここは耐えてこの順位をキープしよう。
と思った次の瞬間、後方で突然とんでもない大爆発が起こった。耳をつんざくような音に慌てて振り向くと、巨大な爆炎の上から人影が猛スピードでこちらに迫ってきていた。
『偶然か故意か!?A組緑谷、爆風で猛追ーー!!』
「そんなのあり…?」
恐らく、前半に残っていた地雷を一か所にまとめて爆発させ、金属の板に乗った状態で風に乗って飛んできたのだ。強引も強引、考え付いても普通は実行しない。
そして、板に乗った緑谷は3人を追い越した先の地面へ落ちていく。
『抜いたあああああ!!!!』
だが、差は僅差。それに地雷原もまだ抜けていない。爆豪と焦凍は新たな敵の登場に小競り合いをやめた。
「デクぁ!!俺の前を行くんじゃねぇ!!!」
「…後ろ気にしてる場合じゃねぇ」
爆豪は爆発によりもう一度地面を蹴り、焦凍は地面を凍らせてその上を滑る。
『元・先頭の2人足の引っ張り合いをやめ緑谷を追う!』
「差ぁつけられんのは、癪に障るなぁ…!」
順位はこのままでいい、だがあまりに差をつけられてゴールするのも嫌だった。策には反するが、こう、プライドのようなものだ。というかプライドの問題だ。
2人の間に着地しようとしている緑谷は、板をもう一度地面に叩きつけるつもりらしい。この爆風に巻き込まれたら最後だ。
灯水は咄嗟に蒸気を出して空中に舞いあがり、横に飛ぶ。その直後、緑谷の板が地雷を捉え、先ほどには劣るが爆発を起こした。地上の爆豪と焦凍はもろに爆風を食らって動きが止まり、灯水も体勢を維持するためにその場にホバリングする。
『緑谷間髪入れず後続妨害!地雷原即クリア!!』
「もう抜けたのか…いって、くそ、走るか…!」
凍結した手に痛みが走り、仕方なく走り始めた爆豪たちの後ろに着地して灯水も走り始める。ほとんど焦凍、爆豪との距離はなく、腕が触れ合いそうになるが、地雷原を抜けた狭いコース内では妨害もできない。
そして、ゴール。大歓声のスタジアムに戻って来たのは、最初が緑谷、直後に相次いで焦凍、爆豪、灯水だった。4位は好成績と分かっているが、地雷原の最初に逡巡したのが悔やまれる。少しでも前へ出て置くべきだったのだ。じくじくと痛む手と足の氷結を解凍しながら、飯田や麗日と話す緑谷を見る。
侮っていたわけではないが、予想以上にタフだ。しかも、恐らく個性を使わずに1位を取った。対して焦凍と爆豪は悔し気だ。灯水も顔が険しくなっているかもしれない。
悔しい。だが、この感情をここまで強く感じたこともこれまでになく、同時に楽しくも感じていた。本気の勝負で競い合える環境とは、こうも大事なものだったのかと実感した。