燃えろ体育祭/前編−10


すべての者がゴールするまで待って、順位が出そろったところで整列となる。列といってもかなり適当だが、何となくクラスでまとまっていた。爆豪や焦凍、灯水は離れた場所に待機している。全体を見渡せる場所にいるのは、単に足の解凍が思うようにいかないからというだけだ。


「いって…くそ、サポーターなしじゃきつい…」


真剣勝負、とは思ったものの、そうも言っていられなさそうだ。足や手につけていたサポーターや手袋は、今回は公平性の観点から着用を認められなかった。そのため、いつもより圧倒的に蒸気の使用が制限されるのだ。それなのに、最後に意地で個性を使ったために凍傷一歩手前になっていた。
足は蒸気の凍結によって痛めており、手は超臨界水のときに火傷のようなものを負っていた。手は冷やしつつ足は温めるとなると、できるにはできるが時間がかかる。

喉の渇きも気になるし、体温は少し高めになっている。一度休憩でも挟めればよかったが、それは許されていなかった。どこまでも厳しい。


「Plus Ultra…手段は選んでられない、よな…」


ミッドナイトはひな壇に立つと、次の種目の発表に入った。浮かび上がるホログラムに回る字を見つめる。個人戦の次は団体戦が来るはずだ。どうにか個性をあまり使わずに勝てるようなものがいい。


「さーて第二種目よ!私はもう知ってるけど。さあ言ってる側から…これよ!!」


どん、と浮かんだ文字は、「騎馬戦」とあった。
参加者は2人〜4人のチームを組んで騎馬をつくり、それぞれに割り振られたポイントの合計点が騎馬の持ち点となる。ポイントは障害物競走の順位に則って下から5点ずつ大きくなっていく。最下位の42位の5点に始まり。2位で205ポイント。灯水は195ポイントである。
そして。


「1位に与えられるポイントは1000万ポイント!上位のやつほど狙われちゃう、下剋上サバイバルよ!!」



***



騎馬を組むのに与えられた時間は15分。騎馬が崩れても0ポイントになっても続行可能ということで、多角的な動きができる組み合わせが望ましい。そして灯水にとっては、なるべく個性を使わなくて済むところが良かった。

焦凍はすぐに作戦を組み立てたようで、早くも騎馬を作り終える。爆豪は個性の汎用性が高く持ち点も高いため人に囲まれていた。灯水の周りにも大勢の生徒がいたが、灯水はそれに考えるそぶりを見せながら目をつけていた生徒を追っていた。

それは、普通科の心操人使。先日A組に対して宣戦布告した選手である。障害物競走で、なぜか他の生徒に担がれて動いていた。序盤で引き離したため以降は見ていなかったが、27位でゴールしている。不思議な光景を覚えていたので、順位表で名前を把握していた。
どう考えても、他人を乗せるなんて考えられない。この体育祭において、自分から他人のために犠牲になる者などいないからだ。それに、担いでいる生徒たちは何の反応も示していなかった。あの焦凍の氷結に対してもだ。
そこから考えられるのは、人を操るという個性。どのようなトリックかは分からないが、あの個性なら終盤に追い上げることで取りに行けるはずだ。制限時間15分を考えると、最後の数分なら普通に個性を使用して戦いに行ける。

すると、心操が1人の生徒に近づいていった。尾白のところだ。すでに後ろにはB組の生徒らしき人物もいる。心操が尾白に声をかけ、尾白がそれに答えた、その瞬間。尾白の動きが止まった。


(声をかけて答えたら発動、ってとこか。OK、いける)


灯水はすまなさそうにして周りの生徒に断りを入れると心操のところへ向かった。その肩を叩くと、心操は意外そうに振り返った。


50/214
prev next
back
表紙に戻る