燃えろ体育祭/後編−9


第1戦で破壊されてしまったフィールドを修復している間に、飯田や麗日など緑谷と仲がいい連中は保健室に走っていった。あの大けがだ、様子を見に行くのも分かる。飯田はそのまま第2戦の控室に行くのだろう。


「いやー、にしてもすっげー戦いだったな。緑谷大丈夫だといいけど」

「男と男の熱い戦いだったな!」


隣の上鳴が言うと、切島も頷く。爆豪はつまらなさそうにしていた。灯水は何とも言えず、セメントスが調整しているフィールドを見つめていた。


「まさか轟が左使うとは!騎馬戦で使わねぇって言ってたのに。どう思うよ〜灯水?」

「…え?あぁ…あれだけ反動で右側凍り付いてたら、炎じゃないと最後の緑谷君の攻撃には対応できなかったよ」

「そうだよなぁ。灯水も炎は出なくても状態変化できるだろ?いいよなぁお前ら、汎用性高くて」

「…そうかな、どの個性も使いようだよ」


一瞬何といえばいいのか分からなかったが、とりあえず当たり障りないことを言って笑顔でごまかす。嘘は言っていない。どんな個性も本人の努力しだいで最適な利用法があるはずだ。


「そろそろセメントス先生の修理も終わりそうだから控室に行くよ」

「おう、頑張れよ!」

「3回戦で会おうなー!」

「てめーは俺が殺すっつってんだろ」


上鳴と切島に見送られ、切島の煽りに爆豪が暴言を吐く。なんとなくこの3人の相性がいいような、互いにぴったりと合っているような気がして、少し、見ていられなかった。



***



控室で待っていればすぐにアナウンス。もう飯田vs塩崎の戦いが終わったらしい。この次はもう常闇との戦いだ。色々と考えているが、咄嗟の判断力に優れた常闇に通じるかは状況次第。こちらも臨機応変な対応を第一とすべきだろう。

色々と心に渦巻くことはあるが、今はいったんそれらをすべておいて置く。今すべきこと。それはこの戦いに勝つことだ。負けていい試合があると思っていては雄英でやっていけない。

立ち上がって廊下を進めば、本日3度目となる歓声による出迎え。明るいグラウンドに出るとそれは一気に盛り上がり、さらに大きくなった。
2回戦第3戦、これに勝てば1年ベスト4に入る。

フィールドに上がると、4隅に設けられた燭台から炎が燃え上がり、反対側に常闇が立つ。


『次はA組トップクラスの実力者の戦いだぁ!!影によって瞬殺を決めた常闇!バーサス!絶対的氷結によってこちらも瞬殺の轟兄!!この勝負どうなるーー!!?さぁさぁレディーー!!』



騎馬戦のとき、常闇の黒影は爆豪の爆破に怯えていた。ただの衝撃や炎に弱いのならここまで勝ち進めるわけがないので、考えられるのは、ヤツが影であるということ。簡単に考えれば、それは光に弱いということだ。
第一目標にして最大の目標は、光源をつくることだ。そして同時に、


『START!!!!』

「いけ黒影!!」


開始早々、攻撃に転じる相手への防御をすること。何か策を講じられる前に倒すのは当たり前の手口だ。しかも黒影の攻撃力は非常に高い。


「ちょっとセコいけど…!」


灯水は足と手から氷結を繰り出した。しかしそれは攻撃ではない。
足からは分厚い氷が素早く灯水の周りを囲むようにドーム状に形成されていき、厚さが1メートルを超えた。形成終了と同じタイミングで黒影が衝突したが、分厚い氷はその衝撃に耐えた。全方位が覆われているため周りは完全に見えなくなっている。


「集中しろ…集中…」


目を閉じて意識する。作り上げるのは、正確かつ高度な造形の氷。フィールドの形、位置、様々な条件は頭に叩き込んだ。そのうえで、黒影に邪魔されないよう一瞬で行うのだ。


「…いけ!!」



その瞬間、灯水には見えていないが、フィールドの両端に突如として巨大な氷の壁が現れた。高さ10メートルほどのそれは、若干傾いている。それも、片方ずつ傾きの角度が違った。表面は芦戸戦のときのように非常に滑らかになっており、まるで、「鏡」のようだった。


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