燃えろ体育祭/後編−15
スタジアムの上空に、色とりどりの煙玉が打ち上げられる。歓声の中、灯水は異様な空間に立って歓声を受けていた。
「それではこれより!表彰式に移ります!」
ミッドナイトが宣言すると、集まる生徒たちの後方にいる報道陣のフラッシュが焚かれる。それを一段高いところから灯水は見下ろしている。
数の都合上、ベスト4が表彰されることになっていて、3位が2人になるよう規定されている。今回、3位になったのは灯水と飯田。そして準優勝が焦凍で、優勝が爆豪だ。
3位と書かれた円柱状の台の上に立っていると、生徒たちのドン引きした顔がよく見える。彼らの目線の先は、灯水の右隣、1位の少し高めの円柱だ。
そこには、拷問にでも使うかのような大仰な拘束具に拘束された爆豪がいた。個性を使えないよう両手は厳重な鉄の手錠に覆われ、手錠と腰は鎖で台に固定されている。口も金属の覆いによって塞がれているため、「ん”んーー!!!」というくぐもった声だけが聞こえていた。
その向こうで2位の台にいるのが、凪いだ表情の焦凍だ。まだ考えがまとまったわけではないだろうが、ある程度道筋を見つけたのか、色々なことを静かに考えている顔だった。そこには、今まであった鋭利な険しさはない。
個性の反動も収まった灯水だけが、そんな隣の2人の異様な状況に苦笑して立っている状態だ。1位が拘束されて2位が無表情というとても嫌な表彰式である。
焦凍が保健室を出たあと、しばらく灯水は体温調節機能の回復を意識しながら寝ていたが、それが成功してしまえばあとはリカバリーガールの個性で治った。完全な本調子ではなく、回復のために体力を持っていかれてだるさはあるが、それでも笑えるくらいには回復している。
寝ると人間すっきりするもので、灯水も色々と考えて動揺していたが、今はすべて放っておくことにした。
決勝戦で爆豪と焦凍が何を話していたのかは分からなかったが、ただ、爆豪の勝つために個性を使えと焦凍に怒鳴っているのだけは聞こえた。その爆豪の言葉に、少し難しく考えすぎていたのではと思いなおしたのだ。
もちろん、考えることはたくさんあるし、灯水の心のぽっかりと空いてしまった空虚な気持ちも消えてはいない。むしろそれは強まっている。
ただそうは行っても灯水が雄英にいて、ヒーローを目指すことに変わりはないし、どんな心境の変化があろうと今更志望を変えるわけでもない。焦凍に必要とされなくなって灯水の存在意義が薄くなろうと何だろうと、結局やらねばならないことに変わりはないのだ。
だから、答えの出ないことに悶々としているよりも、それはいったん答えを出すべきときまで放っておいて、今は為すべきを為すことを心がけよう、そう思い至ったのである。
「3位には轟君兄ともうひとり、飯田君がいるんだけど、ちょっとお家の事情で早退になっちゃったのでご了承くださいな」
ミッドナイトは報道陣に向けて前置きをする。灯水の隣に立っていない飯田は早退したとのことだ。表彰式を欠席するほどのこととは、少し気になった。
「ではメダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!」
「私が、メダルを持っ「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」て来た!!」
スタジアムの天井からジャンプによって現れたオールマイトの登場は非常に格好良かったのだが、いかんせんミッドナイトのフリと被ってしまったため締まらない。それでも気を取り直して、オールマイトは銅メダルを持って灯水の前に立つ。
「おめでとう、轟少年兄。工夫を凝らしてよく頑張った。体力をつけていけば、より手札のバリエーションも増えるだろう!」
「はい、ありがとうございます!」
あのオールマイトにメダルをかけてもらえる。憧れの人にそうしてもらうことは、心にじわりと温かいものを広げてくれるようだった。