夢主と考える国際経済シリーズ
−EU成立とFTA交渉



よく日本は「西洋は複雑怪奇です」と苦言を漏らすが、アルレシアにとってもEU成立までの過程とその構造は複雑怪奇と言うに相応しいものだった。それはEU市民にとっても同じで、イギリスが離脱するときも、イギリス国民はネットで"what EU is"などと検索をかけていた。
端から様子を見ていたアルレシアでも、EUの複雑さは説明しがたいものがあるのだった。


***


ときは1949年に遡る。終戦後、冷戦構造が次第に明確になるなかで、ヨーロッパ統合による経済の復興と戦争の抑止を模索するようになった各国は、欧州評議会(Council of Europe)を組織した。
当時の各国はこんなことを考えていた。


「お兄さんもさすがに反省…ドイツはむかつくけど、アルレシアの言う通りやりすぎはよくないよね」

「決して戦争を起こさないようにしなくては…兄さんは元気にしているだろうか…」

「ヴぇ〜、もう痛いのやだなぁ…」

「ドイツとフランスに戦争起こされるんはもう懲り懲りやざ…」

「お兄ちゃんもウチもボロボロや…もう無理…」

「兄さんと姉さんと、ベネルクスとして何か手を打たなければ…」


全員に共通していたのは、戦争を決して起こさないようにしたいという意欲。引き金となったフランス、引き起こしたドイツとイタリア、巻き込まれたベネルクスは特にその思いが強かった。

ちなみに他の国はそれほどではなかった。


「俺は六時間で戦争終わっだっぺぇ、あんま気にしてねえけんど…大丈夫かノル?」

「うるせ…ドイツ許さね…」

「俺は永世中立だない、関係ね」

「僕もスーさん寄りで…」

「僕はアメリカにつくしかないし。好きにすれば」


北欧はノルウェーとフィンランドが戦場となったが、ノルウェーはドイツから距離を置き、デンマークは静観、スウェーデンはスイスのような武装中立を貫き軍事力を強化、フィンランドも同調した。アイスランドは欧州から離れているため、孤立を避けようとアメリカについた。


「ええなぁEU…俺は一人でやってくさかい、気にせんといて…」

「とりあえず植民地あれば大丈夫やろ〜」


イベリアの2人は独裁下にあり、厳しい言論統制とともに植民地支配を強めていた。それは凄惨な紛争となって、モロッコやティモールに禍根を残す。


あまり欧州全体が統合に意欲的だったわけではない。だが、西欧6カ国はかなり前向きだった。そこで、フランス外相ロベール・シューマンと実業家ジャン・モネを中心に統合機運が高まり、1952年、フランスを中心にベネルクス、イタリア、西ドイツによる欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が成立した。


「いい?これからは、勝手に鉄鋼弄って武器とか戦車とか作っちゃだめだからね!みんなで共同管理して、何を作るのか明確にしないと石炭も鉄鋼も使えないから!」


ECSCは武器などの生産が勝手にできないようにするための組織だった。戦争抑止への意欲が高かったことから、ECSCは各国代表による理事会よりも最高機関の方が強い=超国家的性格が強い組織となった。

この頃にはすでに冷戦は本格化しており、朝鮮戦争などの表面化例も現れていた。アルレシアの内戦もその一つで、西欧には400万の難民がアルレシアから移動してきていた。


「なんかええ感じやんなぁ!このまま共同体拡大せえへん?」

「僕も姉さんに賛成です」

ECSCの成功をみて、この6カ国は1958年、ローマ諸条約を締結した。これによって欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)が成立することとなった。しかしこの2つは、ECSCの超国家的性格が強すぎた反動から理事会の方が強くなった。この力関係の違いから、ECSCとこの2つの組織を統合することはできず、諮問機関のみ統一した。諮問機関は各国の国会議員による代表によって構成されており、欧州議員会議と呼ばれるようになった。やがてこれは1962年に欧州議会(European Parliament)と改称された。
なお、ECSC、EEC、EURATOMをまとめて欧州諸共同体(European Communities)と呼ぶ。

しかし、この頃欧州は最初の困難に直面する。


「ま、まぁ、このイギリス様が入ってやってもいいぜ?」

「え、眉毛なんていらないんだけど」

「んなっ!?」


EECへの加入を試みたイギリスに対し、フランスは共同体における自身の影響力低下を恐れ拒否。イギリスは拗ねてEFTAを設立し、北欧やアルレシアなどが加盟した。


「そろそろ安全保障にも統合を進めてみませんか?」

「ほれはさすがに急進すぎやざ、ルクセン」


さらに、安全保障分野にも統合を広げようとしたところ反発が強く断念。これにはアメリカも反対していた。


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