夢主と考える国際経済シリーズ
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18日、収縮は国際決済通貨の枯渇が深刻化し、ドルの市場への放出が始まった。
金融会議の席でアメリカは頭を抱えて俯く。
「まずは俺の主要銀行とFRBにドルを撒かせるよ…」
「当たり前だろばか!!くそ、俺のところにもやらせるよ…!」
イギリスはなんだかんだと言いつつ真っ先にドル放出を開始する。
「私も、致し方ありません」
「まったく、恐慌だけは回避せねば…」
日本とドイツも、それぞれ円とユーロを使ってドルを市場にばら蒔き始めた。スイスは無言でフランとドルを交換し、それを手伝う。
こうしてなんとか世界恐慌に陥ることは避けられた。
だが、再びアメリカがやらかす。
29日、64兆円という空前の負債を抱えたリーマンブラザーズの破綻と金融恐慌を何とかするため、アメリカの下院は70兆円分の経済安定化法案を審議した。しかしこれが土壇場で否決され、ニューヨーク株式市場は最悪の777ドルの暴落を引き起こした。
慌てて10月3日に可決したが、6日からは暗黒の一週間と呼ばれる世界各地の証券取引所の暴落が発生した。
これには、支援した日本や中国、サウジアラビアやUAEの金融機関も大損を出すはめになり、金融恐慌は拡大することになった。
「何やってるあるかー!!せっかく支援してやったのにー!!」
「あああ…大和生命保険が倒産…5日間で2661円も株安に…」
さらにはとりあえず円を買っておけと日本円は高騰し、一時は1ドル=87円にまで円高が進み、輸出企業は軒並み赤字決算となった。
「まずい!俺のポンドがぁああ!!」
「お、おお俺のクローネぇええ!!!」
対ドル30%の通貨価値下落を記録したイギリスポンドとデンマーククローネによって、両国は一気に経済が混乱した。それを横目にEUは足並みを揃えたため、下落は10%ほどで抑えた。
「た…たすけて…」
「すまねぇアイス…俺も…」
アイスランドは財政破綻の危機に瀕した。ベッドから起き上がることもままらないが、デンマーク同様にクローネが暴落したノルウェーはどうしようもない。
「はは…またロシアさん家になるのかな…」
「あばばば」
「ラトビアーー!!げほっ、けほっ」
同じく破綻の危機に陥ったリトアニア、ラトビア、エストニア。隣のロシアが恐ろしいが、隣も大変なことになっていた。
「前回は…何ともなかったけど…アメリカ君、どうしてくれよう…」
前回とは違う資本主義のロシアは、一気に投資が逃げて国内から資本が流出し、息も絶え絶えだった。もともと8月にグルジアにちょっかいをかけていたこともあり、投資家が急速に逃げたのだ。
「わ、我はまだなんとか…」
「私もまだ何とかなりそうや…ロシアさんは息しよっと…?」
BRICsの中国とインドもダメージは大きかったが、10億の内需が下支えになっていた。
「まずい!タイが息していないぞ!げほっげほっ、」
「ベトナム!無理は禁物ネ!」
柔らかな笑みを浮かべて倒れるタイ、激しく咳き込むベトナム、寒気に震える台湾と、東アジアの小国は世紀末である。
「さぁてアメリカ、気分はどうだ?」
そしてアルレシアは、ニヤリとして倒れるアメリカの前に立つ。熱に朦朧とするアメリカの頭もとで、ドル束をぱしぱしと叩く。
「アルレシア…」
アルレシアは、EUが大丈夫ならさほどの影響がない。先進国の中では最も多くの国とFTAを結んでいたため、関税がかからずに輸出できるアルレシアが一人勝ち状態だった。EUが何とか持ちこたえて需要をそこまで減らしていないことも大きい。事前に日本円を買っていたことも助けになった。
「た、たすけてくれ…」
「俺をいいように扱う、なんて言ってたのは誰だったか?」
「ひっ…謝るよぅ…!」
「仕方ねぇな、この貸しはでかいからな?」
アルレシアはそう悪どく笑うと、持っていたドルの札束をアメリカに向けて叩きつけるようにばら蒔いた。
そして、高笑いしながら去っていった。
完全に悪役のそれだったと、近くで見ていたキューバは後に語った。