旧拍手お礼文
−ホワイトデー(世界)




アメリカ西海岸時間、3月14日。


世界会議のためにアメリカを訪れたアルレシアは、会場に着くなりまず鼻をつく甘ったるい匂いに顔をしかめた。

「なんだこれ…香水かなんかか」

アルレシアは眉間にシワを寄せつつ会議室に入り、いつもよりこの時間にしては人数が多いことに気付く。

それを謎に思いながら着席すると、一同がそわそわとする。

「…、オランダ、今日はいったい」

「またかいアルレシア!」

遮るように叫んだのは、やはりというか、フランスだ。

「なんだよ、またなんかあんのかよ」

「え、ほんとに知らないの?」

「あぁ」

「今日はホワイトデーやざ」

隣のオランダはため息をついて言った。

「なんだそれ」

「バレンタインのお返しさする日だ」

今度はノルウェーが答える。

「…まさか、今日が会議なのも、お前らが早く来てんのも、」

「そのためなんだぞ!」

アメリカも立ち上がって誇らしげにする。

「いやでもなアルレシア、俺は反対したんだぜ」

イギリスはアメリカを睨みながらアルレシアに優しい目を向けるという器用なことをする。

「最初、今日は俺とアルレシアの二国会談だっただろ」

「…そういえば」

「それが、フランスやドイツが同じ日にアルレシアに会談申し込んで、喧嘩になったんだ」

イギリスの商談があるから、とフランスやドイツの申し出を断ったのだが、後にイギリスからもキャンセルが入った。

それに関連するんだろう。

「結局ヨーロッパ会議にしようってなったんだが、アメリカとロシアが反対してな」

「それで世界会議になったと。アホか」

くだらない、と脱力すると、隣から包みが渡された。

「アルレ、やる」

渡して来たのはオランダだ。

「ありがと」

「昔お前が好きや言うたチョコを再現した」

「えっ、マジか。それは嬉しい」

二人の間に和やかなムードが流れると、ノルウェーが後ろからアルレシアに抱き着いた。

「やる」

「俺もー」

デンマークも隣から差し出す。

二人からチョコを渡されて、アルレシアは礼を言うがオランダと睨み合って聞いていない。

ノルウェーの拘束をそっと外すと、目の前に人影が落ちる。

見上げると、ロシアが包みを差し出していた。

「どうぞ。ウォッカ入りだよ」

「そりゃまたすごいな…ありがとう」

ロシアから受け取ると、今度は赤い包みが差し出される。

「親分からや!」

「トマト入り…?」

「さすがにそれはないで」

おかしそうにスペインが笑い、アルレシアもそりゃそうだ、と苦笑する。

「ヴェー、アルレシア兄ちゃん、俺らも用意して来たよー」

「感謝しろこのやろー」

イタリア兄弟は二人で一つの箱だ。

有名なブランドものである。

「ありがとな」

頭を撫でてやると、イタリアは抱き着きロマーノは照れた。

「離れろイタリア…アルレシア、これは俺からの感謝の気持ちだ」

イタリアを引きはがし、ドイツはこれまた有名ブランドの箱を差し出す。

「なんだ、ドイツまで。ありがとう」

意外に思うが、ドイツの真面目さを考えれば自然かもしれない。

「アルレシア、これ手作りなんだが」

「おいイギリス、アルレシアに汚いもん渡すなよ」

「なんだとこら!」

言い合いながらイギリスとフランスがやって来て、揃って机に包みを置く。


片方は有名ブランド、片方はなにやら怪しい空気を纏う。

「あー…ありがとう…」

「アルレシア、無理すんなよ?これは爆弾処理班に任せた方がいい」

「うるせえぞ髭!」

二人がまた言い合いを始めると、手を叩く音が響く。

そちらを見ると、音を出したのはアメリカだと気付く。

「俺からはこれだ!」

アメリカはそう言って、何やら台座に被せられた布を取り払った。

台座に乗っていたのは、小さなエンパイアーステートビル。

「日本が30分の1にチョコで小型化してくれたんだぞ!共同開発だ!」

「窓枠や装飾まで細部にこだわりました」

「…食えねえ…つか、アメリカほぼなんもやってないだろ?」

「チョコを用意して溶かしたんだ!crazyだろ?」

「Amazing」

「Thank you!」

「褒めてねえよ」

呆れながらも、こだわり抜かれた一品を眺めた。










「俺のが一番だろう?」

アメリカの得意げな言葉、それがゴングとなった。





「何言ってんだアメリカ!唯一手作りの俺だろ!」

「×××作った眉毛は黙ってろ!お兄さんのが一番だ!」

「ヴェ、俺たちだよー」

「その通りだ!」

「親分それは譲れん!」

「僕のに決まってるでしょ?馬鹿なの?ウフ、」

「ドイツ人のチョコが一番に決まってるだろう」

「俺ん家のやざ」

「俺んどごが一番だっぺえ!」

「少なくともあんこでね。俺だ」

騒ぎ出す国たちに、アルレシアはため息をつく。

前回とまるで変わらない。


「おい」

アルレシアが一言声をかければ途端に静まる。

「俺が一番好きなのは、」

誰かの唾を飲み込む音が響く。


「日本のme○jiのやつだ」

「あ、それはどうも…」



「…なんでだよ!!」


イギリスの華麗なツッコミが響き、チョコのエンパイアーステートビルが揺れた。


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