旧拍手お礼文
−bento(蘭)
bento、それは最近世界で流行っている日本の食文化である。
箱の中で表現される色彩や見た目、長持ちする工夫や冷めても美味しい味付け。
さらに栄養価や量など自分に合ったものを作れる。
そんな奥深い弁当の文化は和食の世界遺産登録に前後して流行し、特集本も売れている。
意外にも流行に敏感な国として知られるオランダもそれに目をつけ、ある日いきなりアルレシアのもとを訪れた。
「弁当作るで」
「なんだって?」
突拍子もないことには慣れているアルレシアは、冷静に玄関に立つオランダを見詰める。
「日本の食文化やざ。箱に飯詰めて持ち運べるようにするんやと」
「さすが魚を生で食べる国、伝統的に料理を保存しなおかつ持ち運べるようにしてたのか」
アルレシアは感心しながら美しい弁当箱を眺める。
「日本から買ったやつや。漆塗り?みたいなやつやったな」
「あぁ、この前イギリスも漆塗りの茶筒買ってたな。見た目も良く保存能力が高くて使いやすいみたいな」
「イギリスはどうでもええけど、はよ弁当作るで」
「分かった分かった」
アルレシアは諦めてオランダを招き入れた。
キッチンまで通し、弁当箱を広げる。
「なに入れんの?」
「日本は主食の米みたいやけど」
「じゃあ俺らはパンでいいな。てかパンしかねえ」
「サンドイッチでええやろ」
パンを出して耳を取り、サイズを小さめに切っていく。
「スクランブルエッグ作ろうか…オランダ、卵出して」
「ん…混ぜんの大変やろ、俺がやったる」
「え、いいよ別に」
「遠慮せんでええ。力仕事は俺の仕事や」
「…ん、」
スクランブルエッグは任せ、アルレシアはドイツ産のソーセージを焼く。
アルレシアの好みの半熟さを残すために絶妙な加減で混ぜるオランダに、くすぐったい気持ちになるのを感じた。
捲った袖から見える腕の筋肉の筋が混ぜる度に動く。
「あ、ちょっと強すぎ…っつか、雑だぞ」
生クリームなどを足した段階で、少し抵抗が変わり手つきが雑になっている。
「もっとこう、柔らかく…」
「アバウトすぎや。もっと具体的に言いね」
「うーん…」
アルレシアは迷った末、ソーセージを皿に移してからオランダに近寄った。
そして、ボウルを抑える左腕とお玉を持つ右腕の間に入った。
後ろからオランダに抱き締められているかのような体制だ。
それからアルレシアはオランダの手を取り一緒にかき混ぜる。
「なにやってんねや」
「この方が分かりやすいだろ。ほら、やってみろよ」
オランダは軽くため息をついてから、かき混ぜるのを再開した。
すると、背後でオランダの胸筋が動くのを感じた。
混ぜるのに合わせて逞しい胸板が動く。
「おぉ…」
アルレシアはそこに手を当て、動くのを楽しみ始めた。
「すげえな」
「…、お前な、」
何か言いたげなオランダだったが、楽しそうなアルレシアにまあいいかと独りごちる。
後でちゃんと付き合ってもらおう、そんな不埒なことを考えながら、オランダは目の前のつむじにキスを落とした。
――――
欧米では夫婦で弁当を作って楽しむそうですね。
そういうところは欧米らしいと思います。