旧拍手お礼文
−寂しさに(普)



中世。英仏百年戦争の時。







イギリスとフランスが戦いを始めてしばらく、小休止を挟みつつ、いまだ戦争は続く。

その間、アルレシアは時々しか二人に会っていなかった。

交易は北欧が中心になっていたが、北欧も北欧でごたついている。

戦争が当たり前の時代、戦争をやらないアルレシアの方がむしろ異質と言えた。

その隙を虎視眈々と狙うのが、プロイセン、もといドイツ騎士団だった。

プロイセンはアルレシアと交易し、あわよくばキリスト教を広め、さらにはアルレシア自身を手に入れようと目論んでいた。

しかし体は大きくなれどアルレシアはプロイセンを全く顧みず、見向きもしない。

なんとか意識させようと、涙ぐましい努力の最中である。


イギリスとフランス、北欧が忙しい今、アルレシアと仲を深めるチャンスだった。


プロイセンはアルレシアの家まで赴き、巨大な首都に圧倒されながらも、アルレシアがいる王宮へ向かう。

東方の片田舎とはわけが違うヨーロッパ最大の都市は、森を馬で駆けるプロイセンには縁がないものだ。

と、そこへ見慣れたプラチナブロンドが見えた。

アルレシアである。

人混みに辟易としていたプロイセンは、何も考えずにアルレシアに近付いた。

「おい、アルレシア」

「あ?ってプロイセンか。どうした?」

そこでプロイセンは、着いたらアルレシアへの用事を考えようとしていたことを思い出す。

ただ会いに来た、では決まりが悪いからだ。

「えっ、と…だな…あー、その、」

歯切れが悪いプロイセンに、アルレシアは不信そうだ。

焦ったプロイセンは、咄嗟に「イギリスたちがいねえから寂しがってんじゃねえかと思ってな!会いに来てやったぜー!」と、より気持ちの悪いことを言ってしまった。

「…はぁ?余計なお世話だ」

ざっくり。プロイセンは切り捨てられ、ガーンと音が聞こえそうなショックを受ける。

アルレシアはそれを見て、おかしくなった。

図体が大きくなったわりに、いまだこう、幼い感じを残す。

今日は特別だ、とアルレシアは口を開いた。


「ま、確かに暇ではあったな。ちょうどいい、付き合えよ」

「っ、ほんとか!」

とたんに立ち直ったプロイセンに笑いそうになる。

「嘘はつかねえよ」

「…お前はそういうやつだよな」

嬉しそうなプロイセンの顔を見て、アルレシアはふっと微笑んだ。

「こう見えてお前より遥かに年上なんだ…俺がエスコートしてやるよ」

そう言って手を差し出すアルレシア。

プロイセンはその格好よさに顔を赤らめた。

「そ、それは俺の沽券に関わる!」

それを認めまいとプロイセンは叫ぶように言ったが、アルレシアは「はいはい」と言って気にした様子ではない。

完全に上手だった。

「くそ、なんでお前はいつもそう余裕そうなんだ」

今度は悔しげなプロイセン。

アルレシアは内心でプロイセンの百面相に笑いつつ、「年の功だな」とだけ言った。

「ちっ…」

埋めようがない差を悔しく思うプロイセンだが、アルレシアはそんな姿に目を細める。

「でも…来てくれたのは、嬉しかった。寂しいのは…ほんとだからな」

年の功、というだけあって、様々な感情がごちゃごちゃになった笑顔を見せた。

プロイセンはその笑顔がひどく綺麗に思えた。


「…だろ」

プロイセンも穏やかに笑う。









1440年、ドイツがこの街を空爆する、ちょうど500年前のことだった。


123/163
prev next
back
表紙に戻る