旧拍手お礼文
−イベリアの夏(ベネルクス)
親分領時代
夏といえば暑い、そんな当たり前を、アルレシアは何度も呪っていた。
スペインの屋敷にて、ウィーンへ出掛けて不在のスペインの他にアルレシア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクがいた。
ロマーノは昼寝だ。
季節は夏、オランダと和解してからはずっと平穏な日々が続いている。
しかし最近、連日の暑さにその平穏も壊れようとしていた。
「あっづー、なんなんこれぇ…」
「姉さん…それは言わない約束ですよ…」
「ほんまや」
ベネルクス組はリビングのソファで仲良くだらけている。
彼らは大陸西岸性気候のため、夏はそこまで暑くならない。
アルレシアも北海気候のため暑くはない。
だがここ、スペインは地中海性気候のため、非常に暑い。
それに慣れきっていないアルレシアたちはバテているのだ。
アルレシアは暑さに弱く、オランダたちと反対側のソファで横になって無に帰そうとしている。
目を閉じて室内の音に耳を澄ましていれば、オランダたちの声が聞こえてくる。
「なぁ、お兄ちゃんなんでそんなマフラーなんて巻いとるん?暑くないん?」
「それがなんや」
「見てて暑苦しいんやけど」
「お前に関係ないやろ」
どうやらベルギーが八つ当たりを始めたようだ。
オランダは簡単に苛立っていた。
そこへルクセンブルクが泊めに入る。
「姉さん、そんな兄さんに突っ掛からないでくださいよ、」
「お前はなんなん?その髪。それかて暑苦しいわ」
「別になんでも良くないですか?」
ルクセンブルクも簡単に着火した。
片方目が前髪に隠れてはいるが、おそらくぎらついているんだろう。
「嫌やわぁ、二人してそんな暑い格好しよって…」
「じゃからお前に関係あらへん言うてるやろ!」
「兄さんすぐ怒鳴らないでください、耳障りです」
「あぁ?」
どんどんそれぞれの言葉が荒くなっていく。
昔からの商人ベルギー、現在の貿易王国オランダ、領土拡張を図るルクセンブルク。
ベネルクスは見た目より遥かに苛烈な中身をしている。
(下ロタリンギアのときは可愛かったのになぁ…)
中世中葉の3人を思い出すと歴史を感じる。
「なんなん!?そうやって雑な扱いばっか、金とアルレ兄ちゃんしか興味ないんか!?」
「それの何が悪いんじゃ言うてみぃ!」
「うるさいって言ってますよね!?」
うん、そろそろうるさい。
この暑い中なぜ兄弟喧嘩など聞かなければならないのか。
アルレシアは眠気を抑えて起き上がる。
それに気付いた3人は、アルレシアを見て固まる。
「うるせーぞ…おまえら…」
目はとろんとし、暑さで上気した顔、乱れた服や掠れた声がどこか扇情的だ。
その色気に3人ともやられた。
「「「……」」」
「ん…いー子」
違う意味で黙った3人をふっ、と笑って褒めたアルレシアに、 オランダたちの顔は赤くなった。
やがて耐えきれずアルレシアは再び寝てしまった。
しかし、ベネルクス兄弟はアルレシアのためなら喧嘩しないでおこうという結論になったらしい。
もう騒ぎが起きることはなかったのだった。