小ねた集
−rotating CEO(蘭)



●回る社長ロンド
オランダ鉄道CEOの話




「オランダお前、鉄道会社が100%風力発電で運行するってほんとか?」

「ホンマやで」


2017年1月、オランダ鉄道が運行するすべての列車を風力発電のみで動かすと発表した。これは世界初の試みである。

その記念式典にオランダに招待されていた。
どうせ会う口実だったのだろう、現に他の国は来ていない。
会場はなぜか屋外で、オランダらしい風車の前だ。


「よくもまぁ、風力だけでやろうなんざ…」

「アルレと違て、俺はほかのやつと陸続きやさけ、ほないに大変なことやない」


大陸部の国は互いに直接電線を繋いでいるため、電力の融通ができる。
ドイツが原発をやめると言えたのもそれがあるからだ。


「で?式典てなにすんの」

「さぁ。俺も知らん」


さすがに国に対してそこまで言うことはしないか、とアルレシアも納得する。


「まぁ、どうせ普通にスピーチして来賓が祝福して終わりってとこだろ」

「ほやの」

「…マジで会うためだけに呼んだんじゃねえだろうな」

「………」

「おい…俺だって暇じゃねぇんだぞ」


とりたてて特別なことでもないと本人も分かっていながら呼んだのだ、いよいよこれはただの口実だったかと聞いてみれば黙秘。
沈黙は肯定だ。


「…アルレは、嫌やったか」

「うっ…」


すると、オランダは途端に寂し気な顔になった。
いつもは無表情で表情筋を動かさないくせに、アルレシアと一緒のときはころころ変えてくる。
やはりこの年下ながらアルレシアが最も信頼する隣国には、一番アルレシアも弱いのだ。


「…あーもう、嫌じゃないから困ってんだろ。大したことじゃなくても呼ばれたら来ちゃうだろうが」

「アルレ…っ!」


こんなことを言わせるなと視線を逸らすと、抱き締められる。他にも人々が来ているのだ、ふざけんなと押し返そうとしたが、周囲の人々は生暖かい表情。
歴史的に2人が仲がいいことは知っているし、そもそもこの国は世界で初めて同性婚を容認した国だ。
そうなるのも当たり前だった。


「あーもう…始まるぞ」


式典が始まるため離れればオランダは渋々離れた。

そうして式典は特に滞りなく始まったが、CEO、最高経営責任者がスピーチを終えた時だった。


「…おい、え、何する気だあいつ」

「……、」


なんとCEOは風車に上ると、いろいろとロープなどの安全装置をつけた上で、羽根にくくりつけられた。

記念に回るというのだ。風車の羽にくくりつけられて。


「……何を見せられてんの」

「……俺にも分からん」


回るCEO。ゲラゲラと笑う参列者。
アルレシアも、だんだんとおかしくなってくすりと笑った。


「…まっ、面白いもん見れて良かったわ。来て正解だな」

「ほ、ほうか!」

「ん。じゃあ今日はお前のおごりな」

「…、分かった」


オランダの目を見上げれば、オランダは少し複雑そうにしながら奢りを了承したのだった。



ーーーーーー
2017年1月
オランダ鉄道CEOロジャー氏、風車に乗って回る
BBC、ロイター等


153/163
prev next
back
表紙に戻る