小ねた集
−Attention Please?(蘭)
●こちら副機長の国王です
オランダ国王が実は副機長やってた
ときどき、オランダがアルレシアの家にやって来たときに微妙な顔をしているときがあった。
きちんと空港まで出迎えてやったというのに浮かない顔をしているものだから、体調でも崩したかと聞くのだが、いつもオランダは「なんでもあらへん」と言って話を終えてしまう。
何回かそういうことがあったから、機嫌が悪くなるような仕事でも押し付けられたんだろう、と勝手に思っていだのだが。
「あー…まさか、そういうことか…?」
テレビが報じるニュースを見て、ひょっとして、とアルレシアは予想がついたのだ。
そこで、すぐにその場でオランダに連絡してみることにした。
「もしもし、オランダ?」
『なんや』
「今ニュース見た。お前ん家の国王の副業」
『…ほうか』
オランダ国王が、何とオランダ航空の副機長を20年以上にわたってしていたというのである。
バレなかったのか、という疑問はすぐに出たが、
「どうせ機内アナウンスなんて誰も聞いていない」
という国王の回答に納得するほかなかった。
しかしさすがに、オランダはアナウンスの声と名前に気付いていたのだろう。
アルレシアにフライトした便で国王が副機長をしていたときに乗り合わせ、微妙な気持ちになっていたはずだ。
「お前がたまに変な顔して降りてくるのそれか」
『…ほや。自分の家の国家元首が副機長とはいえ運転しとるんや、なんぼでなんでも気になる』
「そんで妙に疲れたような感じだったのな。まぁ、俺も同じ目に遭ったら王宮に駆けつけるわ」
『昔とはちゃう、国王かて好きなことしてええ時代や。ほれもあって声かけへんかった』
「それもそうか」
もともと欧州の王室は手に職つけるというか、何かしらに専門的になろうとする傾向がある。
イギリスは海軍に行くのが伝統だ。
『ほういや、アルレんとこは何しとるんや』
「…この前、商務省の官僚と経済政策について口論してたな」
『……ほれも、文化、やざ…』
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2017年5月
オランダ国王、実は副機長だった
ロイター