小ねた集
−4





「…じゃあ次、スカイt」

「はーいお兄さんたちスカイチーム一択だと思いまーす!!」

「俺!俺がいるんだぜ!もう決まったようなもん!!」

「騒がしいぞ韓国、それに私もいるんだからアジア枠としても申し分ない」

「私も忘れちゃだめヨ!」

「一応我もっかいここでも出とくある」

「ちょっと黙ってくださる!?耳元で騒がしいですわ!!」

「うへぇ、いつ見てもおいらここにいていいのか分からないや」

「アルレシア君、ロシア線は僕たちスカイチーム以外に考えられないよ!まさか北欧の子たちに頼るわけないよね?」


アルレシアの言葉を遮って、上からフランス、韓国、ベトナム、台湾、中国、チェコ、ルーマニア、ロシアが怒涛の勢いで喋り始めた。ワンワールドもえぐいメンバーだったが、スカイチームはその上を行く。


「…まったく…ちょびっと落ち着きねま…」

「おいオランダ、お前のアライアンスだろなんとかしろよ」

「無理やざ」


そんな様子にため息をつくオランダ。確かにこれは、正直手に負えない。
だが、アライアンスとしては非常に強力なメンバーであるのも確かだった。


「なんといっても俺とオランダのKLM・エールフランスがいるんだから!どう考えても欧州線はお兄さんたちの勝ちでしょ!」

「私も忘れないでいただきたいですわね」

「うふふ、僕のアエロフロートは東側にたくさん飛んでるよ。もう崩壊したけどね」


一部ダークなことが聞こえたが、フランスたちの言う通りである。
世界最古の航空会社であるオランダのKLMオランダ航空と欧州トップクラスのエールフランスは、現在一つのグループ企業としてスカイチームの中核を成している。
この2社だけで、すべての欧州とアフリカ、中東、東アジアに至るまで広くカバーできるのだ。

さらに、意外と欧州において強いのがチェコ航空である。格安だがこれもどこにでも飛んでいて、欧州格安路線の代名詞といってもいいほどだ。

そしてこのアライアンスをより強化しているのが、ロシアのアエロフロートである。東アジアから欧州まで、北方航路での輸送を長年行ってきた。安かろう悪かろうを体現するサービスの低品質さはあれど、やはりそのコスパは目を見張るものがある。
「中国国際航空よりマシだよ」「なんあるか!?」という声が聞こえたが、それは同じ穴の狢というものだ。

その中国だが、スカイチームには中国東方航空、中国南方航空、厦門航空が参加している。フラッグキャリアである中国国際航空が非常に劣悪であると低評価されている中で、南方航空などは特にサービスに力を入れており、東アジアと東南アジアにおいて中国のこの3社は力を持っている。
アジアの覇者と呼ばれるエアアジアにも匹敵するほどだ。

また東アジアにおいては、台湾の中華航空、ベトナム航空、ガルーダ・インドネシア航空が品質、路線網ともに充実しているほか、やはり大韓航空が大きな影響力を持っている。
また、ベトナム航空は事実上カンボジアのアンコール航空も傘下にしている。ベトナムは常にカンボジアの経済利益を搾取していることで知られている。

アジアは他にサウジ航空とレバノン航空もおり、中東路線も確保。中央アジアはロシアがいるし、アフリカにはケニア航空もいる。南米はアルゼンチン航空とメキシコ航空がおり、世界のかなり広い範囲をカバーしていた。


「デルタとメキシコがいるから北米は十分。フランスとオランダがいるから西欧もOKで、東欧もチェコがいる、なんていってもアジア路線がめちゃくちゃしっかりしてるのは金になるな」

「でしょ〜?」


どや顔のフランスだが、エールフランスとKLMオランダ航空は2010年のユーロ危機で経営破たん寸前に追いやられたから合同しているのだ。
ちなみに、欧州の航空会社がこれほどまでに合同したり傘下にあったりするのは、まず2001年の同時多発テロ、2003年のSARSのパンデミック、そして2008年のリーマンショックと2010年のユーロ危機というように21世紀が踏んだり蹴ったりだったからである。
アルレシアとて石油や天然ガスがなければ同じ運命だったし、スロバキアなんて国内3社が全滅した。


「俺と一緒は嫌なんかアルレ…」

「うっ…」


迷うアルレシアにそんな悲し気な目で見てくるオランダ。後ろでフランスが小声で「いけ!泣き落とせ!」とエールを送っていた。これぞエールフランス。やかましいわ。


「…とりあえず、コードシェアとかマイル提携とかで探るわ。ドイツとオランダかな、最初は」

「まぁ、ほれが妥当やざ。気ぃ向いたら一緒にやりよっせ」


オランダもけろりと切り替えてそう頷いた。
ふと、アルレシアは黙っているイタリアに気づく。アリタリア・イタリア航空はスカイチームのはずだ。


「…イタリア?なんも言わねぇの?」

「あ、俺?うん…ほら、俺のアリタリア、破綻したし…そしたらUAE(アラブ首長国連邦)のエティハド航空に事実上買収されたし…ドイツが俺ん家の半分牛耳ってるし…」

「あ……」


フラッグキャリアはスカイチームだが、どのアライアンスにも入っていない他国のフラッグキャリアに買収され、しかもルフトハンザがめちゃくちゃ食い込んでくるイタリアの空。
欧州組は自分たちでは救ってやれない最大の問題児からそっと目を逸らした。


150/163
prev next
back
表紙に戻る