小ねた集
−the Rain of Note



●リクエスト文 夢主の家の祭
ifストーリー準拠


アルレシア王国には、クリスマスやバレンタイン、ハロウィンなどキリスト教世界発祥のイベントはない。そういう文化的風習はなく、あくまで小売業の商戦レベルに留まっている。
日本へ強いシンパシーを覚えるものだ。

国の休日は年末年始のほか、9月の建国記念日や5月の終戦記念日、7月の立憲記念日などがある。
特にこれといって行事などはなく、政教分離にうるさかった時代からは土着宗教に関するもないため、かなり公の休日は少ない。

そんなアルレシアにおける最大の祭は2つある。

1つは7月、七年戦争においてポルタスヴィア攻防戦が行われる中、現王室の直接の祖であるカール2世が偶然にも見つかった日を記念するものである。
カール発見を劇団が表現し、初陣のドグラント海戦を再現する。南東部の沿岸でとりわけ盛り上がるイベントだった。

そしてもう1つ、これは全土で行われる祭がある。
それが、『紙幣の雨』と呼ばれる奇祭だった。




その日、オランダとイギリス、フランスが揃って8月のアルレシアにやってきた。真夏の晴れ渡る空の下、たまたま三人はその祭に居合わせたのだ。

12時、正午になると同時に、街のメインストリートで歓声が上がる。


「何事?」


フランスが首を傾げる。アルレシアたちは首都の通りに面したホテルで会議をしていた。


「あぁ…窓から見てみろよ」


アルレシアが言うと、三人は眼下の通りを見下ろす。そして驚愕した。


「は!?んだあれ!!」


イギリスの声に、アルレシアは苦笑しながらコーヒーを啜る。


「紙幣の雨っつー祭。1665年の、第二次英蘭戦争で、俺はアルレシア騒乱を引き起こしただろ。最初はイギリスの商館や船、銀行、店が襲われて、そっから全土で暴動になった。そんときに、イギリスの証券や手形を市民がぶちまけたわけだ。その様子を再現する祭」


「さすがに偽札やろ」

「おう、スウェーデンが銀行券としての紙幣を始める前だしな、B5ぐれえの有価証券か手形が主流だから、それを人々や企業、店舗がぶちまける」


通りには人々が集り、歓声を上げて紙をぶちまける。ビルから空砲で発射するのは百貨店だ。
17世紀後半から銀行券としての紙幣が登場するが、その前から紙幣は手形として存在した。アルレシアは特に有価証券による貨幣流通がすでに盛んだったとめ、騒乱では大量の紙幣が空を舞った。


「当日、企業や店が通りで一定量配布する。それをぶちまけた後、祭の最後に人々はそれを回収する。配布した量より遥かに多い枚数を最後に集めて提出すると、商品券や割引券と交換できるんだ」

「それで片付けにもなるわけね」


交換に必要な量はそれぞれが決めるが、配布量の5倍以上であることが多い。人々は全力で集めて割引券をもらいに行くわけだ。


「法律で紙の質が決められてて、短期間で土に還る再生紙だけってなってんだ」

「なんか…お前らしいな…」


騒乱を起こされた側のイギリスは微妙な顔をする。こんな悪ふざけのようなことでも、利益とCSRが旦保され、制度付けられている。
フランスはいつの間にやら混ざりに行ってしまい、オランダはあの頃を思い出して懐かしそうにした。

いずれにしても、国としてこの奇祭を呆れたように、そして面白そうに見ながら、暑い夏の日が過ぎていった。


151/163
prev next
back
表紙に戻る