夢主のお悩み相談シリーズ
−がんばる君に/西



●16世紀

相談者:スペイン



オランダとも和解し、穏やかな日々が 続いている。
ベネルクス3人組は相変わらず仲が良く、ベルギーのワッフルも美味しい。
スペインとポルトガルがもたらしたアジアの富が、欧州全体をどことなく活気付けているような印象だ。

そんな中、名実ともに太陽の沈まない帝国を築き上げたスペインが、最近何となく元気がない。子分たちの前では明るく振る舞っているのだが、ふとしたときに翳りが出る。それは、アルレシアしか気付いていない変化だろう。そろそろかな、と、アルレシアは思っていた。



***



夜、皆が寝静まった頃、アルレシアは 蝋燭の明かりが消され始めた廊下を歩いていた。ロマーノの部屋からスペインの部屋までの区画だ。
やはり予想通り、スペインが燭台片手に歩いてくる。柱に寄り掛かって待てば、スペインは驚いたように話し掛けてきた。


「あれ、アルレやん。どないした?」

「…お前を待ってた」

「え〜、どしたん、親分と一緒に寝たいんか〜?」


明るく笑うスペインに、アルレシアも 苦笑混じりに返す。


「お前仕事は?」

「今日はせえへんよ、もう寝よかなて」


それならちょうどいい。寝るつもりならこちらもやりやすかった。
アルレシアは柱から背中を離し、スペインの横に立つ。高い位置にある目を見上げてニヤリしてやった。



「それならいい。ほら、一緒に寝るんだろ?」

「…えっ、ホンマに?えっ!?」

「驚きすぎだろ」

「アルレ、それは夜のお誘い、」

「手ぇ出したら殺す」

「ひえっ…」


先手を打っておけば、スペインも本気ではなかったのだろう、笑って歩き始めた。燭台を少し下げて、熱が顔に届かないようにしてくれるのはスペインらしい気遣いだった。

そのままスペインの部屋に着くと、燭台をテーブルに置き、スペインがシャツを脱ぐ。なんでラテン系は服着ないで寝るんだろう、なんて思いつつ、逞しい上体を晒したスペインが明かりを消した。
一気に部屋は暗くなり、外の月明かりだけが頼りだ。お互い船で遠出をする身だ、それくらいの暗闇には慣れている。難なくスペインとベッドに入った。


「珍しなぁ、アルレが一緒に寝るなんて」

「…まぁな。お前、元気なかっただろ」

「っ、…やっぱバレとったか、アルレには」

「100年はえーよ、出直せ」

「年の功やね」

「うるせえ殴るぞ」

「うぐっ、もう殴っとるやんか…」


腹パンをかませば、無防備なそこに入った拳にスペインは呻く。そうして横向きになったところで、アルレシアはその腕に頭を乗せて、スペインの胸元に寄った。


「アルレ…?」

「なんかさ、スペインはこう…甘えたくなる包容力あるよな」

「えっ、そーなん?」


異文化の衝突地点であるイベリア、その大部分を占めるスペインの文化は、寛容が根底にある。その包容力は、自分の弱いところを八つ当りのようにぶつけて全力で寄り掛かりたくなるような、そんな魅力があると思う。


「皆それぞれ甘えてるんだよ、親分。オランダも、ベルギーと、ルクセンも……ロマーノも」


スペインが息を飲む。図星をつかれた驚きか。それくらいお見通しなのだ、特に分かりやすいスペインならなおさら。


「ロマーノのあれも、素直になれないありのままの自分を、お前が受け入れてくれてるから、ああやって反抗的なんだよ」

「…ホンマ、お見通しやんなぁ」

「何年生きてると思ってんだ」

「…アルレって、ホンマ、年上なんやなぁって感じるわ」


そう言って、スペインはアルレシアを 抱き締める。ベッドの中、抱き締められているのはアルレシアだが、スペインがすがり付いているように見える。実際、そうなのだろう。


「…年上だからさ、年下の面倒くらい、簡単に見てやれんの。たまには付き合ってやるから」

「おーきに、アルレ……あー、ホンマ好きやぁ〜…」

「はいはい…お疲れ様、スペイン」


その言葉が聞こえたかどうか分からない。すぐに寝息が聞こえてきたからだ。まぁ、これくらいならいつでも言ってやれる。金は取らないでおいてやろう、と一人ごちて、アルレシアも目を閉じた。


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