第三話: 情報屋−2


突然暴落した裏社会の銃市場、ACTIRの謎の地下道。これだけで繋がりを見出したのは単なる直感で、証拠と帰結にはほど遠い。
むしろ、この地下道が無関係であることを示す証拠を探すべきだろう。


「誰がこの地下道を使っているのか、それだけで十分だろ」


顔認証によって、地下道の潮騒地区側の出口にあたる2丁目のコンビニ付近を調べ、不審な人物がいないか探る。業者の姿があり、その人物がきちんと業者だと裏が取れればそれまでだ。
漣は顔認証を駆使して、地下道の出口付近、コンビニである「ウェスタンストア潮騒2丁目店」周辺で怪しい人物がいないか虱潰しに探す。ハッキングしたセントラルゲート、ノースゲート、サウスゲート、ベイライン潮騒駅、四カ所すべての検問を通過した人物の許可証の情報と照らし合わせるのだ。
正面のモニターには監視カメラの映像が早送りで映され、顔に四角い認証エリアが表示されては消えていく。それと同時に右側のモニターには四カ所のゲートを通過した許可証の該当するものが顔認証と同時に呼び出され照合される。

ウェスタンストア付近に現れる人物はほとんが客。あとは周辺施設の従業員だ。他に、ウェスタンストアの商品を運ぶトラックの運転手などがいる。
特に怪しいところはないが、ふと、見慣れない顔が現れた。


「勤務中のMSD?」


深夜、ウェスタンストアのトラックのあたりにいて留まっていた二人の男がいた。制服姿で、その制服はTIREAのMSD(Maintenance of Security Division)、治安維持部という部署のものだ。MSDは事実上の警察であり、警視庁から潮騒地区におけるパトロールなどを委託されたTIREAの部署の1つである。
彼らは、賭博施設に入らない方針を決めた警察に代わってこの地区の警察をやっている。制服の間は決して私的なことをしないことになっていた。

彼らの情報を調べれば、MSDの中のEPS(Entertainment institution Patrol Section)、娯楽施設パトロール課のメンバーであることが分かった。EPSはカジノなどに直接入ってパトロールをする仕事を請け負うため、各カジノには彼らが入ってくる。そのため、よく見れば見覚えがあった。Crow crowNにも入ってくるからだ。

TIREAのMSDのサーバーをハッキングしてシフトを奪うと、監視カメラの日時にあたる時間におけるこの二人、岩泉一と京谷賢太郎のシフトを確認する。


「立派な時間外労働だな。正規時間じゃカジノを回るだけでいっぱいだ、そうなるか」


彼らはあきらかに、通常業務外のことをしている。
同じ時間、新東京港4丁目の大型客船ドック、NT-C1〜4ドックにかけて、大型客船が停泊していた。この客船の籍を確認すると、「白鳥郵便汽船」所有だと分かった。白鳥郵便汽船はSTCグループ(Shiratori Trading Company)という世界的商社グループの子会社だ。そしてベイライン風の道駅では、ベイラインを運営する帝都電鉄のトラックが何やら積荷を下ろしていることがハッキングした映像で分かった。


「これは…なかなか面白いことやってんじゃね…?」


かつての雇い主の男は、確かにACTIRでも情報屋をやれと言ったが、別に日本の情報を欲していたわけではなく、単に漣の稼ぎ柱を立たせるだけだった。それでも、漣はやるからには全力を出したい。
小手先で男女を引っ掛けて不倫だなんだという情報をもてあそぶのは飽きたのだ。


この街を支配するTIREA、世界トップクラスの商社グループSTC、私鉄最大手の帝都電鉄、そしてウェスタンストアを運営する国内最大手の小売流通事業ウェストリバーHD(ホールディングス)、その組織的な密輸が想定されるのだ。これら3社は、「白鳥系列」という大企業群に属しており、STCグループの瀬見家、帝都電鉄の五色家、そしてウェストリバーHDの川西家もトップクラスの金持ちだった。

さらにこの地下道から計画が始まっていたのなら、これを造った国内第2位のゼネコン伊達総合建設も関わっているし、伊達総合建設は今もTIREAのインフラ管理室の委託を受けて牛耳っている。


「やってやろーじゃん」


自分の知らないところでこんな巨悪が動いているなど許せない。すべて暴いてやる。それは正義ではなく、単なるプライドだった。


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