第四話: 娯楽都市の番犬−3
ACTIRに来てからというもの、相手にしていたのは女性ばかりであったため、男性相手は久しぶりだ。一応、及川が来る前に一通り準備はしてきたが、日本人男性のそれは固い。モナコにいた頃、ドイツ選出の欧州議会議員の男で馬のような者の相手をしたときも、冷や汗を浮かべながら頑張ったのを覚えている。
漣はのしかかってくる及川の股間をそっと膝で押し上げ確認をする。
小さくはない。まだ完全な状態でないため分からないが、覚悟は必要そうだった。
及川は漣のシャツのボタンをゆっくりと外していく。ネクタイはそのままに、開かれたシャツの隙間から手を滑り込ませた。かさついた手は、漣の胸元を撫でて、先を軽く摘まむ。
「ん、」
「お、感じるんだここ。香坂君は男とは結構寝るの?てか名前聞いていい?」
「向こうでは、それなりに。日本では初めてだな。名前は漣」
本当は何度か澤村に抱かれているが、黙っておいた。その方が興奮するだろうという打算と、久しぶりであるため後ろがきつかったときの保険として、日本では初めてだと偽った。
「じゃ、漣って呼ぶね。そっか、俺が日本人初かぁ。なんか偉業成し遂げたみたい」
「っ、あっ、馬鹿じゃ、ねぇの…っ、」
胸元を弄りながら、及川は耳元に口を寄せてそんなことをのたまった。ふっ、と耳梁に息を吹きかけられてびくりと体が震える。だがやられてばかりではいられない、ノルマは達成しているが、ここはもう少し楽するために情報を得ておきたい。
「じゃ、俺からも質問。んっ、はぁ、及川は、なんでこんなことしようと思ったわけ?」
「んー、別に俺の意志じゃないしなぁ。青城セキュアが儲かるためってことだけかな。あとはスリル?」
及川はそう答えると、胸元に口を寄せた。いきなり吸いつかれ、息を飲む。暖かくぬめりとした舌が先を舐め上げ、鼻にかかったような声が漏れた。欧米ではそんなところはあまり弄らないのだ。
それにしても、及川は密輸という犯罪をその程度にしか認識していないらしい。儲かるというにはマージンを考えれば当然だが、一方で不透明な外生収入は株式会社として誤魔化すことが難しい。大規模な儲けとするには、密輸はリスクが大きすぎる。
「大元から末端まで、結構色んなアクターがいるってのに、んっ、そんな儲かるモン、か?」
なおも胸を吸い上げる及川の髪の毛をやわく掴んで尋ねると、少しだけ口を離して答える。息が肌にかかっているような近さだ。
「最初にこの話を持ち掛けたのはしらとり系列側。乗っかったのは伊達総合建設、そんで実行役として最後に乗ったのが青城セキュアとTIREAの法務室。それぞれメリットは違うよ」
「んんっ、はっ、随分、知ってんだな」
及川は胸元を責めるのをやめず、ひとつ答えるとすぐに再開する。さらに、ボタンをすべて開けると腰をそっと撫で、つい体を浮かせると背中を指で撫でてくる。そのじわじわと責めるやり方は粘着質というか、ある意味前戯としては優しい。
「教えて欲しい?何が目的か」
「…、何して欲しいわけ」
「舐めて」
及川は楽し気に言うと自身のベルトを緩める。かなり乗ってきているようだ。お安い御用だと漣も起き上がると、「そうだ、」と及川は漣の頬に指を滑らせる。
「すぐ入れられるように、同時に後ろ解しといて」
「…イケメンのわりにえぐいこと言うな」
「相手男だしいっかなって。ほら、早く」
漣は頷くと、ローションとバイブを取り出す。バイブは性器の形をしたものだが、これは後ろを緩くするためにマッサージ的に使用するものだ。及川はベッドに移ると真ん中に腰かける。追いかけて漣もあぐらをかく及川の中心に顔を寄せながら、後ろ手にローションを絡ませたバイブを自分の中に入れ込んでいく。風呂である程度処理しておいてよかった。