連載: the other rather together−2
顔を洗い、リビングに入ると誰もおらず、すでに高温となった外の気温を感じさせる籠もった熱に辟易とした。
ふと、テーブルの上に菓子パンが無造作に置かれていることに気付いた。プラスチック皿に入ったサラダも合わせて、コンビニのものだ。
遅れてリビングに入ってきた双子を振り返り、菓子パンを指さした。
「なぁ、これひょっとしてお前らの朝メシ?」
「ん?あぁ、せやで〜。おとん料理できひんし。新しい母さんも仕事大阪市内やから朝は時間あらへん言うてたな」
「まさかずっとこれ朝メシだったのか?」
「ま、しゃあないな」
侑は何でもないように言って牛乳を入れる。開いた冷蔵庫はスカスカだった。父子家庭がどこもそうとは思わないが、とりあえずこの家では食がおざなりだったらしい。
治は何も言わずにパンを食べ始めた。確保した菓子パンは5個ある。まさか全部食べる気なのだろうか。
「……明日から俺が作る」
「え、マジで!?」
驚愕する侑と、パンを口に含みながら目を見張る治。
「そんな不良な見た目して料理男子なん!?」
「見た目関係ねぇだろ……あんま母さんに負担かけたくねえし、自分でやってただけ。別に、そんな大層なモンじゃねえからな」
「マジか〜!や、ホンマ嬉しいわそれなら!」
やはりきちんとした食事ができるにこしたことはない、2人はかなり喜色を浮かべていた。
「弁当は?」
「弁当も作ってくれるん!?」
「どっちかっつーと、弁当の残りを朝メシにする感じだな。そんで俺が家にいる間の昼メシでもある。一石三鳥だからあんま気にすんな」
「はわ……しゅきぃ……」
「は?キモ」
「いきなり辛辣やん」
侑が気持ちの悪い反応を示したため冷たくすれば、およよと泣き真似をした。それを放っておき、食器棚の一角に弁当箱を見付けた。
さっそく明日から作ってやるために、2つの弁当箱を取り出す。細長い二段の黒い弁当箱だ。
「これお前らの?」
「せやで、中学んとき使っとった」
「足りんの?」
弁当箱を並べて見せてやると、侑と治は揃って項垂れた。
「「足りひん……」」
なぜか悲壮感たっぷりに言うものだから、そんなリアクションを示すものではないだろうと、伊吹はおかしくなってきた。
「ふっ、なんでそんな悲しげなんだよ」
くすくすと笑いながら弁当箱を元あった場所に戻し、弁当箱を買うところから始めるか、と今日の算段を付けた。
「今日弁当箱買っておくから」
「あっ、それやったら自分で買うてきてええ?」
食い意地の張る治は3つ目のパンの袋を開けながら名乗り出た。どうやら容量を自分で決めたいらしい。
「それやったら俺も自分の買うてくるわ」
「ん、分かった。じゃあこの片方俺が使うわ」
2人の分は任せることにして、伊吹は2人が使っていた弁当箱を適当に借りることにした。学校が始まったら伊吹は給食だが、高校生になったらこちらを使いたい。
「え、それで足りるん?」
「ちょうどいい。俺そんな食わねえし」
「やから細いんやな」
「うるせえわ」
腰に手を伸ばす侑に拳を見せ付けて牽制し、戸棚を閉める。それなら今日は、食材を買うだけでいい。せっかく夏休みで時間があるのだ、少し料理を勉強してみようと思った。