連載: the other rather together−大切なもの
翌日、伊吹が弁当を作っていると、起きてきた双子がやかましく騒ぎながら謝ってきた。
「ごめぇん伊吹〜、許したって〜」
「はあ?」
いきなり何を言っているんだ、と伊吹は抱き着いてくる侑を胡乱に見たが、それがまた侑を不安にさせたらしい。
「やっぱ怒っとる?」
「なんで」
「だって俺と治が女とおったから」
「なんで彼女でもねぇのに俺がお前らに怒るんだよ」
意味の分からないことを抜かす侑を放ってレンジに向かうと、治が「アホか」と窘めていた。
「自爆すなら1人でせぇや」
「うう…治はええんか…」
「んなわけあるか。でもここで言うてもしゃあないやろ」
何やら小声でぼそぼそと喋っているが、距離が近いのですべて聞こえている。ただ、伊吹には分からない内容であったし、2人にしか通じない話なら向こうが言うまで伊吹から何か言うこともないだろう。
治は居場所として双子に接することを許してくれたが、それは2人のプライベートに干渉することとは違う。依然として、越えない方がいいラインというものはある。
侑の様子からして伊吹に関連することでありそうではあったが、2人から詳細を伊吹に言おうとしてこないのだ、伊吹から聞くことではない。
伊吹はそう判断して、もくもくと弁当と朝食の準備を続けた。
***
伊吹がそんな朝のことも忘れていたその週の日曜、侑と治に「遊びに行かへん?」と誘いをかけられて、伊吹は人で混み合うターミナルの駅前に来ていた。
一応受験生でもある伊吹を休日に外に連れ出すなどあまり褒められたものではないが、そもそも伊吹の学力であれば十分、稲荷崎には受かるレベルであったし、こうして双子と揃って出かけることは実はそうないため新鮮でもあった。
服を見たりゲーセンに寄ったりと、普通の学生らしいことをしているだけだったが、やはり侑と治といると常に軽口を言い合って話題も尽きず、退屈することはまったくなかった。
2人と一緒にいると、仙台では寡黙な方だった伊吹でもよく口を開いてしまう。
しかしそんな時間に、唐突に終わりが訪れた。
駅前の雑踏から、お好み焼きでも食べようと路地に入ったときだった。後ろから、低い声がかけられた。
「おい、宮双子」
「へ…」
侑と治に合わせ伊吹も振り返ると、ガラの悪そうな少年たちが立っていた。5人いるようで、金髪や赤髪などカラフルな頭をしている。高校生ではあるようだ。
侑と治の表情を見やると、「誰やこいつら」と如実に物語っていた。
「お前ら、よう俺らん彼女に手ぇ出しよったな」
「はぁ?何の話してんねん」
侑は少しキレ気味に返す。まったく心当たりがないようだ。そんな態度に少年たちもさらに険しくなった。
「あ?すっとぼけても無駄やぞゴラ…優奈んこと寝取りよったろが!」
「…あぁ、あのビッチか。なんや、お前の彼女やったんか。知らんかったわ。すまんな」
鼻で笑った侑に、少年は完全にキレた。どうやら先日双子が一緒にいた女子は、この少年たちのリーダー格の彼女だったらしい。2人は、彼女たちに相手がいるとは知らなかったようだが、どうでもよさそうだった。