千年純愛−4
「お前らは何モンだ?」
大事なことはそれだ。慣れた感じや、先程祓っていたことからも、双子がただ者であるはずない。
2人は顔を見合わせると、「じゃあ見とって」と言っていったん伊吹から離れる。
そして、一瞬眩く光ったと思うと、その姿を変化させていた。光に目が眩んでチカチカする中、2人の姿を見て目を見張った。
「…狐……?」
「せや。妖狐っちゅーやつな」
「かわええやろ」
2人には、フサフサの尻尾が生えており、服装は制服から神官のものに変わっていた。色合いからして尻尾が狐のそれだと判断したが正解らしく、2人は自分たちを妖狐だと言った。
ここまで来ると、もう信じるしかない気がしてくる。
「……マジか………」
「驚いた?」
「当たり前だろ……」
まさか人間ではなかったとは。
しかしそれにしても、疑問はまだある。優しげな笑みは、それだけでない何かも感じさせたのだ。
「…で、お前らはなんで俺を助けた?俺がここにいることを知ったのはなんでだ?それに、ここが冥界なのはいいとして、校舎から出られなかったのも解せねえ。構造物が同じなら何かが作用していたわけだろ。お前らが転校してきた直後にこんなことになったのも怪しい」
「うお…やっぱ伊吹は頭ええなぁ」
「それに、なんで名前知ってんだ?」
これが初対面のはずなのに、なぜか知っているかのように接してくることも違和感があった。
タイミングも、2人が伊吹を助けたことも、何もかも違和感しかない。
その疑問には、治が口を開いて答えた。
「俺らはずっと知っとるよ。伊吹のこと。千年前から」
「は……?」
千年前、という言葉に面食らうと、侑は微笑んで頷いた。
「せや、千年前。ごめんな、伊吹が勘付いた通り、俺らは伊吹がおるから転校してきて、そんで伊吹をこの世界に呼んだんや。悪霊が襲って来てギリギリまで助けへんかったんも、俺らの存在を信じてもらうため」
なんと、2人は妖狐であることを信じさせるためにわざわざ伊吹をこの世界に呼んで学校に閉じ込めたらしい。転校してきたこと自体、伊吹が目当て。
千年前から知っているという言葉もあって、伊吹は怒りなどよりも疑問の方が大きく先行する。
「……千年前、俺とお前らは出会ったってことか」
「………せやで。俺らは、ただの子狐やったけど」
侑は懐かしそうに言って、治は似たような笑顔を浮かべた。子狐、千年前、双子、そうしたことから、伊吹はある可能性に行き着いた。
「……まさか、俺が助けたやつらか?」
「………へっ、覚えてるん?」
「夢でたまに見んだよ。最後、俺は必ず生贄にされっけど」
すると、突然、侑の丸くした瞳から涙がこぼれ落ちた。ギョッとすると、治もぐす、と鼻を鳴らす。184センチはあろうかという体格のいい双子が泣いているのは伊吹も動揺する光景だ。侑はいよいよ目元を手で擦る。
「…っ、ふっ、ぅっ、伊吹……おれ、おれら、千年、頑張ったんや、伊吹…!」
ぐすぐすと泣きながら、おもむろに2人は伊吹を抱き締めてきた。法衣は柔らかく手触りがいい。その代わり、少しだけ2人の体温が遮られて遠く感じた。
治も泣きながら、耳元でもう少し詳しく話し始める。
「伊吹が、生贄にされて…俺ら、助けたかってんけど、なんもできひんくて……したら、神社の主の、北さん言う神様が、千年修行したら、人になれるて……」
「せやから、俺ら、また伊吹に会いたくて…次は、伊吹んこと、守りたくて……そんで、千年、修行積んだんや」