無着者の執着−10
二人は公園から走り、昼神の家にやって来た。雨は小康状態になっていたが、濡れ鼠の二人はすぐにでもシャワーを浴びて体を温める必要がある。
大きな一軒家の軒先で、鍵を開けて玄関を開ける昼神に続いて中に入る。
靴はなく、一応「お邪魔します」と言った声には当然なんの反応も返ってこない。間違いなく誰もいないと分かった瞬間、扉が閉まるのと同時に、昼神は伊吹を抱き締めて、唇を重ねた。
すっかり体は冷えているはずなのに、昼神に抱き締められ触れ合う部分から熱が急速に全身に広がる。
同じくらいの暖かさの唇が重なると、舌が差し込まれる。咥内に入ってきた厚い舌が伊吹の舌を絡め取り、伊吹もそれに返すように舌を突きだすと吸われる。伊吹の頭を支える手が後頭部を掴み、腰に回った太い腕に引き寄せられさらに密着する。
「っ、は、…っ、」
ようやく口づけから解放されて息をつくと、昼神は伊吹の耳元で低く囁いた。
「マジで最後まで手ェ出すから」
「ふ、付き合っていきなりってやべえな」
「俺ら実質付き合ってるようなモンだったでしょ?」
そう言って昼神はべろりと耳を舐める。同時に、後ろの首筋を擽るように指先で撫でられた。ぞわぞわとしたものが背筋から駆け上がり、思わず声が出た。
「んんっ、!」
「…え、どっち?どっちに感じたの?」
「……どっちもだわアホ」
自分でも変なところに性感帯があったものだと、首筋になおも残る感覚に声を震わせる。
「…はー……今すぐ抱きたくなってきたから、ちょっと離れよ…やばい」
昼神がそう言って離れると、余裕のない様子が新鮮で、そうさせるほどに昼神が伊吹のことを好きなのだと分かってしまう。あまりそういうところを見てしまうと、伊吹もここで抱かれてもいいと思いそうになってしまうので、互いに交代でシャワーを浴びることで一致した。
本当は昼神を先に通したかったが、昼神が平気そうなのに対してくしゃみを連発した伊吹に勝てる要素などなく、伊吹が先にシャワーを借りることになった。
濡れた鞄は玄関の廊下に置いておくことになったため、こっそりスマホだけ持って脱衣所に案内してもらい、昼神がいなくなってからすぐに検索をかけた。
口ぶりからして伊吹が抱かれる側だ。それにあまり異論はなかったため、伊吹はおとなしく受け入れる側の準備が必要だろうと調べた次第だが、なかなか大変そうなそれに怖じ気づく。
しかしそれ以上に期待する気持ちが大きいのは、昼神ならいいという気持ちだけでなく、間違いなく若さ故の好奇心もあるのだろうと自分で思った。
ひとつ深呼吸をすると、伊吹は風呂場に入った。