SS小話集−抱かれたいのは(烏野)


烏野2年マネ男主
総受け



その日も厳しい部活を終え、部室で着替えているときだった。
伊吹もジャージから制服に着替えていると、また西谷が男前な言動をしたという話になって、やがて田中が「もういっそ抱かれてえ〜」と言い出した。

「龍は無理だ!」と西谷に言われて、田中も願い下げだなんだと騒ぐ。そこまではよくある流れだったが、ふと西谷はこちらを見てきた。


「でもぶっちゃけ伊吹なら抱ける!」

「はっ、マジかノヤ!」

「……や、無理、西谷に抱かれるとか」


ドヤ顔の西谷に田中が噴き出し、伊吹はすげなくそう返した。その返答が気に食わなかったらしく、西谷は上裸のまま伊吹に迫ってきた。


「なんでだよ伊吹!俺の何が不満だ!」

「西谷って優しそうに見えて意外と『気合でなんとかなる』っつって無理させてきそう」

「伊吹のガチ批評」


伊吹のやたらリアリティのある答えにさらに田中が笑った。西谷は思い当たる節はないでもないのか、反論せず、「じゃあ龍はどうなんだよ」と聞いてきた。


「田中は最初は優しいだろうけど、慣れてくると雑に扱ってきそう」

「んなっ!俺はずっと紳士だっつの!てか伊吹はどうせ、澤村さん一択なんだろ!」

「それもない」


伊吹がそう返すと、周りが全員驚いたようにこちらを振り返った。澤村を拒否したことがそれほど意外だったらしい。


「…俺なんかしたか?」


澤村も拒否されて会話に加わってくる。伊吹は言いづらさに頬をかきつつ口を開いた。


「……去年の合宿、俺マネージャーの仕事の都合で澤村さんたちと風呂入ったじゃねっすか。その…澤村さんの…受け入れる度量は俺にはねぇっす……」

「なるほど!!大地さんのち○こがでかすぎるってことか!!さすが大地さん!!器がちげえ!!!」


西谷は本気で称えるが、菅原と東峰は笑いを堪えるのに必死になり、田中も腕で口元を覆っていた。
澤村はニッコリと微笑むと、伊吹の肩をがしりと掴んだ。


「伊吹、俺も伊吹には怒らないわけじゃないんだぞ?」

「ヒッ……ま、まぁ、ほら、菅原さんと東峰さんも無理なんで!3年みんな無理みてぇな!」

「おいなんでそれで許されると思ったんだ伊吹〜」


名前を出された菅原が呆れたように言い、東峰は「なんかよく分かんないけど傷付く……」とメンタルを負傷していた。


「だって菅原さん普通に雑だし、東峰さんスイッチ入るとケツぶっ壊されそうなんで」

「めっちゃ喧嘩売るじゃん……」

「そんなことないって言えないのが伊吹のすごいとこだよなぁ」


あっけらかんと言った伊吹が面白かったのか、面白ければ正義な菅原はニヤニヤとして言った。東峰はもはや感心したようにしている。澤村の笑みはさらに深くなったが、伊吹は掴んでくる手から逃げ出して木下と成田の間に入った。


「逆に伊吹は誰ならいーんだ?」


一連の流れをものともせず、西谷は近い位置になった伊吹にそう尋ねる。伊吹は少し考えてから、「2年だと木下と成田」と答えた。
省かれた縁下は「俺は!?」と詰め寄る。


「縁下お前、案外ドSだってこと調べはついてんだぞ」

「どこ調べだよ!」

「俺な。田中たちに勉強教えてるときとか思った。なんかお前、言葉責めとかしてきそう。あと言わせてきそう」

「めっちゃ分かる」


田中が深く頷く。菅原は笑いすぎて呼吸困難に陥っていた。当の縁下は、目を瞬かせてから、ニッコリとした。


「バレたら仕方ないな。覚えてろよ」

「次期主将は圧がちげぇな」


伊吹は成田の背後に隠れる。ちなみに、木下と成田は伊吹のことをさりげなく庇うように立ってくれていた。


「その二人はなんでOKなんだ?」


田中がそれを見て聞いてくる。伊吹は成田の背後から出て、元いた場所に戻ってジャージを鞄に片付けながら答える。


「木下も成田もすぐ甘やかしてくれるし、二つ返事で聞いてくれっから」

「都合のいい男扱いかよ…」

「でも事実なんだよな…」


その答えに木下も成田もげんなりとして呟きつつ、否定はしなかった。
菅原はそわそわとしている影山に気付いたのか、伊吹に1年を指し示す。


「伊吹、1年は?」

「全員OKっすね。山口は紳士的だろうし、月島もああ見えて普通に優しくするタイプだし、二人とも手先器用なんで。日向はちゃんと色々確認しながら進めてくれそうだし、影山も飲み込みは早いから丁寧かつ適切にやりそうだなって思います」


淡々と答えれば、山口は照れて、月島は視線を逸らし、日向は顔を赤くした。そして影山は嬉しそうにぐっと拳を握っていた。

一通り話が済んだからか、田中は学ランを羽織って帰宅モードになりながら、「にしてもよ、」と切り出す。


「伊吹、ナチュラルに抱かれる側で考えたな。もっと嫌がるかと思った」

「あー…」


確かに、と自分でも気恥ずかしくなる。もちろん積極的に抱かれたいなどとは思っておらず、あくまで許容できるというだけの話なのだが、それでも伊吹は自然に考えられた。


「……だって、毎日練習見て、春高出場決めたの見てたらさ、やっぱ、部員全員かっけぇな、って、思うっつーか……」


顔が赤くなってしまった自覚があるため、なるべく全員から顔を背けるが、隠せていないだろう。
静まり返った部室の中、西谷がデカい声で言った。


「やっぱ伊吹なら抱けるわ!全員そう思ってるぜ!多分!」



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