連載: cuddle eagle struggle−2
悔しがる天童だが、あの読みの正確さだ、恐らく次にはもう返してくるだろう。別にレシーブ練である以上、返せないものを打ってもしょうがない、Aパスで返されたからと言ってそれが悪いことではなかった。伊吹はただ、レギュラーに正面からサーブをぶち込むだけだ。
天童の次に入ってくるのは、やたら貫禄のある選手で、若利が「牛若」なら弁慶といったところだろうか。
「俺は大平獅音、WSだ。よろしく」
「お願いしぁーす」
温厚な性格なのだろう、安心させるように微笑んでくれる紳士だが、その構えはやはり隙が無く、WSにおいてレシーバー寄りのスタイルであることが窺えた。
伊吹は威力の変わらぬサーブを打ち込んだが、大平は一発でそれを返して見せた。ボールはセッター位置まではいかなかったが、十分フォローして攻撃に転じることができるラインである。すごいな、と伊吹は目を見張った。
「マネージャーにしておくのがもったいない威力だなぁ」
「いや…そんな華麗に返されて言われても……」
少し悔しくなって言うと、自分の手柄でもないのに天童がやいのやいのと騒ぐ。煽る天才なのだろうか。
大平に入れ替わって入って来たのは、明るい髪色の毛先が黒くなって跳ねているイケメンだった。全体的に顔面偏差値が高い部活だが、その中でも群を抜いてイケメンである。
「よっし次は俺だな!俺はSの瀬見英太、よろしく!」
「お願いします、」
ニカッと人好きのする笑顔を浮かべる瀬見は、兄貴肌な感じがした。だが正セッターなようで、頭がキレるのだろうと推測される。
伊吹は少し強めのサーブを打ってみた。セッターはいろいろなタイプがいて見た目では分からないので、動きで判断しようと思ったのだ。瀬見はボールをレシーブするも、ボールは山形のときと同じくアウト。「あーくっそ!」と悔しがっているが、苦手とまではいかずとも守備が主軸の選手ではないと分かった。攻撃的なセッター、それは若利が主力のチームで果たしてどう機能するのか。まだチームとしてのレギュラーを見ていないため、伊吹は分からないが純粋に気になった。
瀬見の次は、いよいよ若利だ。ぎらついた目で見られて、慣れた伊吹でも緊張する。食われそう、と思いながらボールを手の平で回転させてバウンドさせた。完全に本気のサーブだ。
これまで手を抜いていたわけでは決してないが、100%でもなかった。試合であればアウトになる可能性も見越すような力を籠めて、伊吹はサーブを放つ。
ドッという音は初めてのもので、瀬見や山形の「うお」という声や天童の「強烈ぅ〜」という楽し気な声も聞こえた。
そのボールは若利の太い腕に当たり、こちらへ跳ね返る。だが高さが低すぎて、ネットにぶつかった。勢いよくたわむネットに、アンテナ(ポール)が軋む。
「……、」
若利は自身の腕を見たあと、こちらに顔を上げる。更にギラギラとした目つきは、完全に捕食者のそれだった。
「次は取る」
「…今のも取れよ」
だからせめてもの威勢として、伊吹は煽ってやった。天童あたりは気づいているようだが、若利は単純に煽られたようで、ものすごい視線を向け続けていた。
様子見とはいえ、レギュラー全員にAパスをさせなかった伊吹のサーブに、斎藤や鷲匠は満足してくれたらしい。それも今回はレシーバーの腕を狙う練習サーブ、本番のような「取らせない」サーブではない。取って当然のものだ。それを取らせなかったということで、一定の実力は評価されたようだった。
とはいえ、その後全員が3球以内にBパスへ、そして10球を数える頃にはAパスできっちりと返すようになったため、やはり白鳥沢のレギュラーを2年の初めからやっているだけある、と伊吹はその実力の高さに興奮した。バレーが好きでここに来たのだ、ハイレベルなものを見れば湧き立つ。特に、Liの山形とMBの天童の鮮やかな返球はさすがとしか言えず、もはや悔しさも感じなくなった。