連載: rack up, good luck !−5
なんと影山は、予測がつかないことが売りの日向の速攻を予告した。滝ノ上は影山の自己申告による挑発を笑うと、「ノったるぜ!」と快諾した。
日向は影山の言動に動揺を隠せない。ブロックを破ることができないから、誰にも予測できない位置に飛んでスパイクを打つのだから当然だ。
「…ほんっと、影山は不器用だな」
その意図は、外から見ている伊吹にはある程度理解できた。影山は相変わらず伝え方に難があるし、恐らく影山自身も言葉だけで伝えられる自信はないのだろう。だから、こうやって行動に移している。
「…今のお前は、ただの『ちょっとジャンプ力があって素早いだけの下手くそ』だ。大黒柱のエースになんか、なれねぇ」
それでもやはり言い方ってものがあるだろう、と思うし、田中と東峰も止めようとしているが、影山はまっすぐ日向を見ていた。まっすぐに、言葉を伝えようとしていた。そうやって向き合うようになったことこそが、影山の高校に来てからの最初にして最大の成長なのかもしれない。
「―――でも、俺がいればお前は最強だ!」
「っ!」
「東峰さんのスパイクはすげー威力があって3枚ブロックだって打ち抜ける!じゃあお前はどうだ。俺のトスがお前に上がったとき、お前がブロックに捕まったことが、あるか」
そこで笛が鳴る。嶋田のサーブが現役側に打ち込まれ、縁下がレシーブする。セットアップが始まる直前、宣告通り町内会チームはブロックが3枚日向にコミットした。平均身長は180センチ前後だろうか。委縮する日向に、影山はトスする前に叫んだ。
「躱せ!!それ以外できることあんのか!ボゲェ!!」
悪口じゃねぇか、と内心思った伊吹だが、思っていた通りの影山の行動に先輩として少し感動していた。日向は影山の言葉で、自身の本来の戦い方を思い出す。
身長が低い、力が弱い、初心者である、そんなことはどうでもよくて、打ち抜けないなら、躱すまでなのだ。
ボールはAパス、影山はほとんど動かずにネット際でレフトを向く。日向はレフト側、Bクイックの位置に走り、コミットブロック3枚もそれに合わせて動いた。
しかし日向はそこから、更にバネを生かしてブロード攻撃に転じる。その瞬間はまだトスが行われてはいない。影山の前を抜き去った日向は、概ねAクイックくらいの位置から跳躍し、Bクイックの位置から僅か数秒もしないうちにCクイックに打点を用意していた。
日向のスパイクは嶋田が受けきれずアウト。一瞬の沈黙に、影山の声が響く。
「お前はエースじゃないけど!そのスピードと、バネと、俺のトスがあれば、どんなブロックとだって勝負できる!!エースが打ちぬいた1点も、お前が躱して決めた1点も、同じ1点だ」
影山は日向に対して、エースへの憧憬に負けそうになっていることを見抜いたうえで、自信を取り戻せるよう行動した。きちんと日向に向き合っているからこそのことだ。言葉も伝え方もまだまだだが、その不器用ながらまっすぐな言葉は、行動を通してきっちりと日向に伝わっていく。
「エースって冠がついてなくても、お前が誰よりもたくさんの得点をたたき出して!だからこそ敵はお前をマークして!他のスパイカーはお前の囮のおかげで自由になる!エースもだ!ねっ!?」
影山が急に振った田中は困惑しつつもすぐに同意を示した。
「おうおうそうだぞ!お前の囮があるのとないのとじゃ、俺たちの決定率が全然違うんだぞ!」
「それでもお前は今の自分の役割が、かっこ悪いと思うのか!!」
珍しくたくさん喋ったからか、試合とは異なる息切れをしている影山。日向はスパイクを決めて腫れているだろう手を握りしめた。
「―――思わない!!」