連載: the other rather together−2
暑い中歩くこと10分と少し、住宅街の中にある普通の一戸建ての前で母は止まった。表札は「宮」の一文字で、新しい伊吹の名字である。
距離があまりにも離れていることもあって、再婚前に会う機会はなく、中総体に明け暮れていた伊吹は今回初めて双子に会う。新しい父は一度仙台に来てくれたので面識はある。優しそうな人で、母との再婚をするのも頷ける人だった。
今は8月で高校生も学校はない、各運動部のインハイも7月末で終わるため、双子は部活がなんであれ時間を工面するのが比較的容易な時期のはずだ。双子が通う稲荷崎高校は部活動が非常に盛んだと聞くが、これほどの家庭の事情であれば休むのも仕方ないことだろう。
母がインターフォンを押すと、すぐに扉が開いた。顔を出した新しい父親は、数か月前に会ってから変わっていない。
「ようこそ。暑かったやろ、さ、はよ入り」
招かれるまま玄関へ向かう。家の前に止められたワンボックスのフロントが太陽光を反射して眩しかった。屋外の陽光が厳しすぎて、室内がやたら暗く感じる。玄関に入るとすぐに、正面に廊下と階段があった。廊下の左手にリビングとキッチンがあるようだ。
そして階段からは、玄関の音を聞いたのか、どすどすと重そうな足音がふたつ降りてきていた。
「あら侑君、治君、久しぶり」
「久しぶり〜」
下りて来た2人は、当然のように顔が同じだった。一卵性の双子だけある。身長は180センチを超えていて、金髪と銀髪で髪の色を分け、分け目も対称にしていた。刈り上げ部分は地毛のままである。そしてどちらも、とてつもなくイケメンだった。
金髪の方はチャラそうな緩い雰囲気で、銀髪の方は真顔な緩い雰囲気だった。真面目そうな感じはしない。
どうやらコミュニケーション能力は高いのか、すでに母には親族のように親しくしていた。
遅れて伊吹も玄関に入って、ついに双子と目線が合う。
「うっわ、クソイケメンやん!すご!」
「はぁ……」
2人とも目を見開き、金髪の方はテンションを一気に上げた。勢いに負けて後ずさりそうになる。母は相変わらずのほほんとして流していた。
「紹介するわね、私の息子の伊吹。2人と同じくバレーやってるの」
「え、バレーやってんすか」
そんなこと聞いていなかった。イケメンの双子だったということは事前に母から聞いていたが、バレーをやっているというのは初耳だ。母は「言ってなかったっけ」という顔をしていた。
「やっとるよ!てか敬語はいらんで」
「あ、すんません」
「いらんっちゅーねん」
「…ふっ、N〇VAかよ……」
ナチュラルな関西弁が、昔流れていた英会話のCMを彷彿とさせたため思わず笑いが漏れる。関西弁というだけで面白いことを言っている気がしてくるのは気のせいだろうか。
「ふっる!古いな例えが!」
「あん頃から今も流れとるCMいうたらあれやな、ピアノ売ってちょおだ〜いとか、ドモホ〇ンリンク〇とかやなぁ」
「どうしてそんなに大きくなっちゃったんですかー?も結構長く残ってたけどな」
「真面目にやってきてでかくなれんなら苦労せぇへんよな」
「誰がチビだ」
「言うてへんわ!うはは、伊吹クンおもろいなぁ!!」
「呼び捨てでいい。で、どっちがアッサム?」
「「フューージョン、ハッ!!ってなんでやねん!!混ぜるなや!混ぜるな危険や!!」」
「すげ、双子みてぇ」
「「双子や!!」」
そこまでやったところで母が声を上げて笑う。伊吹たちもやりながら笑っていたが本当に会話がいつの間にか続いていた。
「やだ、コント?」
「ホンマに初対面かお前ら、実は血ィ繋がっとんのやないか」
「いや微妙にえぐいボケすな!再婚ほやほやで言うボケかそれ!」
基本的に最初に喋り出すテンションが高い方が金髪のようだ。だが銀髪の方もノリはいい。伊吹は別に普段からそんなに笑うわけでもなければ喋るわけでもないが、打てば響くのは単純に面白かった。そして結局どっちがどっちなのだろうか。それを察したらしい金髪がおもむろに手を上げる。
「侑です!」
「治です」
「2人合わせて!」
「……」
「……」
「いや合わされよ。水と油か」