連載: the other rather together−2
「なぁはよやろー!」
するといつの間にか着替えていた侑がボールを持って騒ぎ出した。内心で子供っぽいな、と思っていると、周りにいた4人は敏感にそれを察した。
「子供っぽいでしょ」
「大変やと思うけど頑張り、なんかあったら言うてな」
遠い目をした角名に苦笑するアラン、呆れた様子の銀島と赤木。どうやら全員慣れていた。
伊吹も着替えようと鞄を端に置く。準備運動しろとアランに叱られる侑を横目に、網走監獄ティーシャツとジャージを取り出した。
運動部だったためどこでも着替えられる。恥ずかしさなどは特にない。
着ていたシャツを脱いで、少しでもここに来るまでにかいた汗が乾くよう扉の近くに広げて置いておく。上裸でいると風を感じられ、このままでいたい気もした。
「ホンマに中3か」
「ひっ、」
すると、治が背後に回り込んでおり、後ろから背筋を撫でてきた。ぞっとして勢いよく振り返ると、表情の変化が曖昧な治がニヤリとしていた。
「自分、童貞やないやろ」
「……黙秘する」
「言わへんのやったら言わすまでや」
「なっ、ちょ、んっ、!」
突然、治は伊吹の腰を擽るように撫で耳元にふっと息を吹き掛けてきた。思わず声を上げると、さすがに気付いた銀島が治の頭をはたいた。
「何初日からセクハラしてんねんドアホ!」
「いでッ!」
銀島は治から伊吹を引き剥がす。つい銀島にしがみつくと、銀島も無意識に伊吹の頭を撫でる。
そこへ侑もやって来て、頭を押さえる治と伊吹を見比べた。
「……うん、まぁ、確かにイケるわ。こんだけイケメンやとこう、雰囲気?だけでエロい気ィになれるもんやな」
「伊吹、今からでも仙台帰った方がええで」
「あ、大丈夫っす、殴る蹴るの暴行を加えるんで」
「はは、かっこええなぁ」
銀島はそう笑うと双子を蹴散らす。アランが2人をどつき、それを角名がスマホに収めていた。
仲が良いのだな、と思いつつ、伊吹はシャツを着てジャージを着替えた。
一通りアップを済ませた頃には、アランたちも練習に戻っていた。2対2の試合形式だ。練習、というよりは、練習のような遊びだろうか。休みの日であることもあって、本格的なものではない。
インハイ後の熱も冷め切ってはいないのだろう。
侑と治もアップを終えてコートに入る。ボールを渡されて、伊吹はどこか久しぶりな気がする感触を噛みしめた。
「……やっぱ、好きだ…」
ぎゅ、とボールを握り、込み上げる悔しさを押し込める。もう選手にはならないと決めたのだ。
「…伊吹?どないした?」
それを、隣で侑が見ていたらしい。少し心配そうにしてくれていた。あまり追求されたくもないため、誤魔化すようにボールをバウンドさせる。
「なんでもない。てかやっぱシャツいずい」
「え、なんて?」
「……あ、」
油断した。そういえば、仙台市民でもなお使ってしまう、恐らく最後の方言らしい方言がまだ残っていた。
肌に触れるものなどに対して、フィットしないような、不快な感じを示すもので、標準語には直せない。
「……方言。分かっててもたまに出るやつ。いずいくらいなんだけどな」
「どーゆー意味なん?」
「なんかしっくり来ないつか、気持ち悪いみたいな」
「へぇ。てか俺が貸したシャツやんな!?」
何がいずいと評価されたのか思い出した侑が騒ぐので、バウンドさせたボールを再び手に持った。
そして、侑を見上げる。
「なぁ、まだ?」
「っ、早漏はモテへんで」
「ご心配なく。治とまとめてさっきの復讐してやっから」
「ほーんやってみぃ」