連載: the other rather together−3
3対3でやろう、ということになり、最初に角名が審判についた。
そして宮ツインズと銀島、アランと赤木と伊吹というように分かれる。
双子側はセッターとWSが2人、こちらはリベロとWSが2人という構成となっており、双子側が攻撃専門状態なのに対してこちらは攻守バランスが取れている。特にアランは、全国でも名の知れたスパイカーである。
九州の桐生、関西のアラン、東京の木兎と佐久早、そして東北の牛島が有名なスパイカーたちだ。さすがに伊吹も名前を覚えている。憧れなどは特にないが、本物だ、くらいには思っていた。
「伊吹ナイッサー!」
そのアランに声掛けしてもらえるのは、伊吹でも嬉しくは感じられた。
だがそれ以上に、相手コートの双子の鼻を明かしてやりたかった。セクハラをかましてきた2人から点を獲りたい。
角名が笛を鳴らすと、伊吹はサーブトスを放って助走する。ジャンプサーブだと分かり、高校生たちがざわついた。
そして、渾身の力を込めて体全体をバネにボールを叩きつける。狙い通り、侑に飛んだボールは受けきれずアウトとなる。
止めていた息を吐き出してから吸うと、熱気が肺に入ってくる。その感覚が、堪らなく好きだった。
「うっわ、なんや今の!伊吹そんなすごいサーブ打てたんか!!」
ボールを受けられなかった侑は興奮していた。アランと赤木も感心したように「ほぁ〜」と気の抜けた声を発していた。
「どっからそんな力出て来んの…」
審判の角名も少し呆然としていた。伊吹は別のボールを手に持つと軽く回転させる。
「俺、空手黒帯なんすよ。いかに効率的に体動かして力出すかは熟知してます。なんで、地力は強くないんすよね」
「へ、へぇ〜」
「空手!?黒帯!?めっちゃかっこいいやん!なんやそれ!」
「始まったで侑の小学生モード」
テンションが振り切れた侑に、治は呆れている。角名や銀島は、黒帯と聞いて思い当たったことがあったのか顔を引き攣らせていたが双子は気付いていない。
「なぁなぁなんか技やってくれへん!?」
「なんかって…」
「あいつ、かっこええモン見るとああなんねん。諦めた方がええで」
慣れたようにアランが言うと、赤木も頷く。メンタルが退化してしまった侑お坊ちゃんのご所望を満たしてやらねばならないらしい。
仕方なく、ボールを置くと双子の方へ向かった。
そして、目をキラキラとさせる侑に向けて、予備動作なしでいきなり蹴りを繰り出した。
上段回し蹴り。軸足となる左足の親指付け根辺りからシューズの高い音が響き、蹴りの右足の甲は瞬く間に侑の顔のすぐ横で止まった。侑は一瞬遅れて「うおっ」とビビってよろめく。
間髪を入れず、その右足を下ろして左回りで回転し体の向きを変えると、今度は右足を軸足として左足で上段後ろ回し蹴りを放つ。
これも治の顔のすぐ横で寸止めした。治もまったく同じリアクションでよろめいてアンテナに掴まる。
「なんかあったら、殴る蹴るの暴行を加えるって、俺さっき言ったじゃん?」
「ヒエッ…」
それを覚えていた銀島と角名は、伊吹が空手をやっていると聞いた瞬間にあの言葉が誇張でもなんでもなかったと気付いたようだ。遅れて思い至った双子は、やはりそっくりに顔を引き攣らせた。
「身長180ちょっとって、サンドバッグにはちょうどいいんだよな」
「「調子乗ってすんまへんした」」