連載: the other rather together−青天の霹靂
再婚すると言われたとき、侑は正直あまり驚かなかったし、興味もなかった。それは治も同様で、良かったな、くらいにしか思っていなかったのである。
遠く仙台から会いに来てくれた新しい母は、おっとりとした優しそうな人で、もともとコミュニケーション能力の高い双子からすればまったく問題なかった。
しかし連れ子がいる、新しく弟もできると聞いたとき、さすがに2人も動揺した。互いしか兄弟のいなかった侑たちにすれば、兄と弟という感覚が理解できなかった。
2人は別に、双子だからといって何でも一緒なわけではないし、むしろ双子で仲良し、みたいなことは気持ちが悪くて嫌だったわけだが、それでも双子というのは特別だった。不可分の存在に近い。
中学の途中から、バレーの実力が治優位のまま固定化されるようになったあたりで2人は別個の人間としての成長をした。それでもなお、2人の間には、当人は認めたくないが認識している確固たる絆があって、そこに弟という存在が加わることはまさに「動揺」としか言い様がなかった。
珍しく緊張して新たな弟の到着を待っていた2人だが、来てみればあっさりと打ち解けてしまった。普段おバカキャラのようで常に思考しているタイプの侑は、僅かな時間ではあるが、今日一日過ごして伊吹を分析する。
夕日に照らされた住宅街を歩くのは、アランたちと分かれた今、双子と伊吹の3人だ。
侑より10センチ以上背が低い1個下の弟は、その差を感じさせない大人びた少年だった。顔立ちもあってクールな雰囲気だが、話せばきちんと返すし、面白いこともする。
バレーについても、強烈なサーブに空手由来の安定したスパイクは稲荷崎でも即戦力になる。そして空手の技を繰り出す様は非常に格好良かった。
外見的印象で言えば、イケメンでクール。バレーについては体に見合わずパワー型。では中身についてはどうだろうか。
あくまで普通の少年という感じで、大人びてはいるがそれも高校生レベルというだけで、中3の夏ともなれば珍しくもないものだろう。
それ以外となると、侑にはまだ分からない。恐らく何か隠している。まだ心の奥を見せてはいないだろう。侑も治も、心の深いところを見せはするが立ち入らせないタイプである。伊吹は巧妙に隠していた。
隠されたら暴きたくなるものだ。
先ほど治がちょっかいをかけて色気を溢れさせていたこともあって、侑は伊吹をどうにか暴いてみたくなったのだ。
どうしてやろう、とニヤリとしたところを見た治がドン引きしている。とはいえ結局双子、治も同じ結論に至るだろう。
そう考えていると、おもむろに下の方から声が掛けられた。伊吹の凜とした声は心地良い。
「なぁ、」
「うん?」
「……稲荷崎のバレー部って、マネージャーいんの」
「実はおらへんねや。ほら、俺めっちゃイケメンやん?色恋目的で喧し豚どもが集まってきよるから」
「…ふは、やっぱ侑って、性格悪ぃだろ」
すると伊吹は、柔らかな笑顔でそう言った。その柔和な笑顔のあまりの綺麗さに侑は一瞬言葉を失ったが、直後、言われたことに気付いて「え!?なんで!?」と声を荒げた。
前を歩く治が噴き出し、「もう見抜かれとるやん」と笑い飛ばす。