第三話: Demon City of the Orient−1


第三話: Demon City of the Orient(東洋の魔都)



中華連邦共和国・香港特別市油尖旺區。


伊吹たちSilentが、今日の昼に深圳に行くため乗り込んだ高速鉄道は、香港の西九龍駅で同じプラットフォームに停車した。すでに車内にいた兵士は全滅しているため、プラットフォームに降り立ったのは伊吹たちだけである。

ホーム上にはまだ多くの敵兵がおり、扉が開いてSilentが飛び出すとすぐに発砲してきた。迷彩魔法は車内の敵を掃討したあとに解いていたが、上に上がるまで隠れていても良かったかもしれない、と伊吹は銃弾を跳ね返すイネクシアの黒いシールドを見ながら思った。


「ったく、俺たちこういう戦闘向きじゃねぇのにな」


黒尾は激しい銃撃を前にしても平然としながら、首を押さえて肩を回す。隠密行動と特殊作戦に駆り出されるのがSilentの役割であって、このような激しい戦闘は仕事ではないのだ。しかし、福田区の各高層ビルに散っていた各小隊を待っていては香港市街地に甚大な被害が出るため、仕方なく先行部隊としてやってきたわけである。
月島と国見と弧爪はげんなりとしている。

武田の命令を受けてすぐに福田区に降りた伊吹たちは、迷彩魔法で隠れて兵士たちとともに高速鉄道に乗り込み、西九龍駅到着までの20分ほどで車内の敵全員を倒した。

ここからは、輸送機によって空路でやってくる後続の小隊と合流するまで、この駅における掃討作戦を行うのである。
本当はすぐにでも大義を追うべきではあるのだが、やはり人命優先だし、マフィア関係のことは中華連邦政府の仕事だ。A24で派遣された国防軍がやることではない。

事実、上階からは人々の絶叫や悲鳴が響いてくる。昼、ここを出るときには深圳から逃れてきた人々でごった返していたが、重慶政府軍の第一陣が襲撃を開始したときにもかなり数はいたはずだ。

そこに、無線が聞こえてくる。雀田の声だ。


『こちら司令部。西九龍駅は国防軍より通報を受けた香港市警が駆け付けましたが、まだ駅には多くの市民がいます。重慶政府軍第二陣は地下3階出境コンコースまで来ており、地下2階入境コンコースで香港市警と銃撃戦になっています。地下1階チケット売り場から地下鉄方面、および地上階に市民が残っています。また、全フロアに逃げ遅れたスタッフがいるようです。第一陣はすでに尖沙咀(チムサーチョイ)に散会し、市街戦となっています』

「こちらSilent、今プラットフォームに到着した。第三陣は予定通り全滅済み。逃げ遅れたやつの位置と戦闘箇所を報告してくれ、研磨が分隊内で指示する」

『了解。じゃあまずは地下3階に上がってください、コンコースの待合スペースと旧パスポートコントロールのレーンにスタッフが隠れています』


黒尾が返事をしてからすぐに雀田は報告を開始した。心得たように弧爪は階段を示す。


「ここの敵は伊吹に任せる。二口、上がったら吹き抜けに出るからそこで隠れてる人たちを保護しながら回って。赤葦が敵の掃討。昼神は先に進んでパスポートコントロールで各レーンを回ってスタッフを回収。国見は敵の掃討。おれとクロ、天童さん、月島はパスポートコントロールに行かずに吹き抜けから地下2階に上がって香港市警と合流。伊吹はフォローしながら地下2階まで来て。雀田さん、細かいところの指示お願い」

『了解』


速やかな立案はさすがだ。伊吹は依然としてこちらに銃撃を続ける兵士たちを振り返る。透視すれば、22番線まであるプラットフォームに敵が散らばっているのが見えた。


「じゃ、ここはやっとく」


伊吹がそう言えば、弧爪は「任せた」とだけ言って階段へ走り始めた。黒尾たちもそれに続く。後ろで足音が遠ざかるのを聞きながら、伊吹は衝撃魔法で正面の敵を吹き飛ばした。照明が割れてショートし火花が散り、壁が外れて車両の窓が割れる。硝煙が照明に照らされてホームを漂うが、衝撃波によってそれも吹き飛ばされていた。


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