第三話: Demon City of the Orient−9



「伊吹、飛雄、セミセミ、やっくんは前のやつら追って。昼神君、にろちゃん、直列展開して二台目止めて。赤葦君、侑君、いくよ」


及川の硬質な声はこの場が極めて厳しいものになることを予感させた。その緊張感に、全員軽口など叩くはずもなく、昼神と二口はすぐに直列孤立空間魔法によって発車しようとしていた二台目のトラックの前に壁を構築する。この二人の直列展開であればまず破られることはない。
あえて走り出した一台目を止めなかったのは、距離を取るためだ。魔法科兵同士の戦闘は味方を巻き込みかねないため、互いに距離を取ることが望ましい。

伊吹は影山、瀬見、夜久とともに左車線から前へ走り出す。同時に、及川と赤葦、侑は麻呂眉と二連黒子に攻撃を開始した。衝撃波と爆発が二人を襲い、空気が震える爆発音とともに街灯がショートしながら一本倒れた。
その横を走り抜けて、昼神たちの壁も抜けて前方に出ると、すでにトラックはかなり前方に行っていた。あれくらい離れていれば十分だろう。


「先行します。瀬見さん、」

「おう」


伊吹が呼びかけると瀬見はすぐに応じる。伊吹と瀬見二人の足下に風気魔法を展開すると、いつも一人でやっている飛行を始めた。あまり複数人を同時に飛ばすことは面倒だからやらない上に、展開される味方も訓練が必要なため、特兵連の第二中隊時代から訓練をともにしてきた瀬見ならばすぐに飛べる。
まずは伊吹と瀬見の二人で空中から前方の一台目を追いかける。後ろから夜久と影山が走って追いかける形だ。


「できればこいつらの正体を知りたいんで生け捕りにしてぇんすけど」

「同感だ。やるぞ」


簡単なことではないことを言ったが、瀬見はなんでもないように賛成してくれた。恐らく、伊吹が殺しかけてしまってもフォローしてくれるだろう。そういうところは、そもそも軍人として伊吹よりキャリアが長いだけある。
空中を思い切り飛ばし、走るトラックに追いつくと、タイヤを爆破しようとした。しかし、魔力を展開した瞬間に孤立空間魔法が発動し、トラックが覆われる。


「チッ、ロシア製のシールドか…!」


やはりその程度の装備を持った上でこんな大がかりな作戦を行ったらしい。中国旧政権がロシアと同盟しているときに輸入していたのだろうシールド兵器によってトラックへの直接攻撃は防がれる。パリで苦しんだシールド兵器と同じか、少し性能がいいかもしれない。


「夜久さん、お願いします」

『了解』


分隊内の無線で夜久に頼むと、すぐにトラックの前方にもう一度夜久の壁が出現した。トラックはまたブレーキをかけて止まる。
トラックからは二人の男が出てきた。透視すれば、ここにいる敵はこの二人だけだと分かる。
瀬見は二人に独立破砕魔法を展開するも、やはり魔力に反応したシールドによって弾かれた。


「押しつぶしましょう」

「後ろのあれだな」

「はい」


短い会話の上で、瀬見が先に動いた。
トラックの前方、夜久の壁の手前にある電工標識だ。高速の道路標識と同じように、中央分離帯と海側の端から立つ支柱に支えられた鉄骨の骨組みに、車線ごとの道路状況を示す電工標識がつけられている。3車線分すべて×印が表示されており、その上の電工メッセージ板には橋が封鎖されているという文字列が流れている。
瀬見はその支柱に破砕魔法を展開して鉄骨を破断する。火花が散り、電工標識もメッセージ板も消える。ショート音と鉄骨の粉砕される鈍い音が響き男たちは振り返る。
その瞬間、伊吹は標識を風気魔法で浮かせて二人の頭上に運び、すぐに頭上から橋へと座標を繋げた衝撃魔法を展開した。


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