第一話: กระต่ายหมายจันทร์−9
外からの銃撃音を聞きながら、トイレの中で侑と二人でEASTゲートを俯瞰してくまなく探していく。
「…、ん、伊吹、コンコースAのラウンジ見て」
「分かった」
何かに気づいたらしい侑に言われてコンコースAのラウンジを見る。航空会社ではなく空港会社のものらしいラウンジを見ると、ソファーで優雅にくつろいでいる者たちがいた。その周りには武器を運んでいたらしい鞄などが散乱している。しかも服装が警察のそれだ。
どうやら爆発はコンコースAで起きたようで、ラウンジから少し奥にいったところの右手側のゲートが崩れ落ちて階下に並ぶ座席を廊下の瓦礫や倒れたエスカレーターが押しつぶしている。
コンコースAも中央部が階下の吹き抜けとなっており、到着階である階下を覗けるようになっている。ところどころにある渡り廊下に展開したテロリストが階下に銃撃をし、階下にいる警察と戦っている。
こんな状況でラウンジに警察がいるわけがない。
「…なるほどな、なんとなく読めた」
「何が?」
目を開けると、目の前に侑の鎖骨が見えた。
侑も私服姿で、白いテーパードパンツに黒い綿生地のシャツとシンプルな格好だが、シャツのボタンを2つ開けているところにネックレスをしているためホストのように見える。革靴や捲った袖の手首に見える時計もなおさらだ。
なぜか距離が近く、ネックレスがかかる鎖骨が目の前にあって眉をひそめる。
「…ちけぇ」
「あ、すまんつい」
どうやら無意識だったらしい。伊吹はため息をついて、謝りながら距離を取らない侑のことは放っておき言葉を続ける。
「俺たちが拘束した5R679便のテロ未遂は陽動だ。犯人拘束のために空港にやってきた警察に紛れてテロリスト本体がいたんだろ。警察のふりしたテロリストが武器を合法的に持ち込んで、普通に空港に入った実働部隊に武器を渡した。受け渡しのタイミングは爆破だな。破壊されたゲートから、駐機場に止まった警察車両の武器をテロリストに渡した」
「なるほど…ほんで、武器の受け渡し終えた警察のふりしたヤツらはラウンジにおるっちゅうわけか。脱出のタイミング窺っとるんやろな」
「ここまでやっておいて逃げおおせるつもりでいるわけだし、警察のふりだって簡単じゃねぇ。そもそも米国の諜報機関が足掴んだくらいだ、正直かなり組織的な犯行だろ」
「…VASNAの犯行なんやろか」
「さぁな。でも軍属でもねぇのにそうそう魔法使いなんていてたまるか。中国崩壊でVASNAが魔法使いを大量生産したようなことが世界中で起きてるとは考えづれぇし」
テロの全容がなんとなく掴めたところで、伊吹はトイレの外に向かう。後ろから侑がついてくる気配を感じながら、外からも相次いで魔力を感じた。
「やっと来たか」
ちょうど外に出たところで、保安検査場から夜久と赤葦、影山、瀬見が出てきた。すぐに戦闘を開始している。赤葦はこちらに気づいて駆け寄ってくる。
ちなみに赤葦は、白いティーシャツに黒いデニム生地のベスト、紺の七分丈パンツといった格好だった。
同じく保安検査場から出て来た夜久は逃げ惑う人々に孤立空間魔法の壁を次々に展開していき、影山はコンコースCに、瀬見はコンコースBに入っていった。
伊吹のところまで来た赤葦は、トイレにいた二人を訝しみながらも「状況は?」と尋ねた。
「今透視して、コンコースAのラウンジに主犯格らしきヤツらを見つけた。俺と侑でやりに行くから、赤葦は夜久さんに敷地全体の防御座標を示してやりながらコンコースAを頼む」
「なるほどね、了解」
捜索行動をしていたと分かり、赤葦は状況を察した。赤葦の透視の精度は非常に高いため、夜久に対して指示するのに適している。俯瞰しながら適宜必要な場所に夜久の防御魔法を展開させるのだ。
同時に赤葦にはコンコースAでの独立魔法によって遠隔攻撃をしてもらう。
その間に伊吹と侑はラウンジを叩きに行く。