第三話: The Tokyo's day to burn blue−1
第三話:
The Tokyo's day to burn blue
日向は風気魔法によって空中に浮き上がると、正面の新宿駅中央東口付近に空いた穴に向かって走る月島を視界に収める。影山は日向に対して干渉直列衝撃魔法を展開し、日向はそれを終末展開する。影山の干渉魔法は日向の終末展開に対して作用することでその軌道を修正し、寸分の狂いもなく衝撃波を月島に向けて放った。
同時に田中や成田も衝撃魔法を放っていたため、月島は後方のほぼ全方位から向けられる攻撃に対して避けることができなくなった。
しかし月島は冷静にすべての攻撃に対して反作用爆轟魔法を向けることで跳ね返し、駅ビルの中央東口付近が大爆発を起こした。爆風が吹きすさび、周囲のビル街のガラスを軒並み叩き割る。
「だめか…!」
日向は悔しくなりつつ着地し追いかける。
現在、第一小隊は月島を追いかけて新宿駅に沿って走っており、同様に月島とともに走る赤葦を追いかけて第三小隊のメンバーも走っていた。大隊内でも最もクレバーな隊員である月島と赤葦は絶妙に日向たちの追撃を躱しており、南口からここまでの繁華街は滅茶苦茶になっていた。
「洗脳なんか食らいやがってあいつ」
影山が悔し気に言うと、縁下は「それブーメランだし赤葦にも当てはまるぞ」と冷静に返した。ここにいる全員、洗脳されて伊吹に迷惑をかけた。
影山と田中、西谷に至っては直接攻撃している。
「くっそ、伊吹も心配なのによ〜!!」
田中はそう言いながらも足を緩めない。地下街に入った二人を追って、ぞろぞろと全員崩れた穴から薄暗い地下街に入った。
東口、中央東口と繋がる地下街は、駅ビルの地下フロアでもあり、歌舞伎町方面へと続く道でもあった。歌舞伎町の地下を張り巡らされた地下街に逃げ込んでいた人々は、日向たちが戦闘を始めたことで悲鳴を上げて我先に地上へと走り出した。
「なんでまだ人いんだよ…!」
木葉が走りながら文句を垂れる。第三小隊は木兎以外全員がここに来ているが、このうち木葉と鷲尾は伊吹に対して戦闘を行った。
小見は走りながら木葉をどつく。
「木葉と鷲尾が伊勢丹で伊吹を攻撃したからみんなビビってここに逃げたんだろ!」
「うぐ…っ」
「…恥を忍んで頼む、地下街の民間人を誰か誘導してくれ」
伊吹に攻撃した張本人でありながら、鷲尾はそう頼んだ。男前にそんな言い方をされて断ることもできない。
成田、西谷、尾長の三人がその役目を引き受けて、先に地下街の先へと走っていった。他のメンバーで引き続き月島と赤葦を追いかける。
日向たちはすぐに東口改札の正面、駅ビルブランドの地下商業区画に差し掛かった。大勢の人々がアルタ前へと続く大きな階段を駆け上がっており、一部は伊勢丹方面へ続く通路へと進んでいく。それを背景に、月島と赤葦はこちらを振り返ると、直列した衝撃魔法を展開した。
轟音とともに衝撃波がテナントの服やマネキン、バッグなどを巻き込んでこちらに迫る。照明が割れて火花が散り、人々の甲高い悲鳴が響いた。すかさず、猿杙と小見が孤立空間魔法によって壁を作り衝撃波を受け止める。おかげでこちらに攻撃が及ぶことはなかったが、同時に、さらに轟音が響いて、日向たちの直上の天井が突如として崩落してきた。赤葦が天井ごと地上の広場を落下させたのだ。大量の土砂が降り注ぎ、明かりが消えて暗くなる。
同じように小見が孤立空間魔法で蓋をして瓦礫を受け止めたが、周囲が瓦礫に覆われて塞がれてしまう。
「吹っ飛ばして地上に出よう」
縁下が言うと、すぐに田中が応じた。小見が魔法を解くのと同時に、爆轟魔法を真上に向けて指向性をもたせて展開すると、瓦礫と土砂を地上へ吹き飛ばす。一気に空が晴れて夏の青空とビル街が視界に入る。
そして全員、急いで瓦礫から地上へと這い出してアルタ前へと走った。すぐに、後方で吹き上げられた瓦礫が先ほどまでいた穴に落下していく音が響いてくる。
そうしてアルタ前に出ると、更地になった広場では、広場に面する家電量販店や伊勢丹方面に続くブランド店、別の家電量販店やスーツショップのビルが壁面のほとんどを失いあちこちに穴を開けて煙を噴き出していた。三々五々に人々が悲鳴を上げて逃げ惑い、アルタの街頭テレビは壁ごと崩落して地面に散っていた。
広場には月島と赤葦がリエーフと合流しており、リエーフを追いかけて三丁目交差点方面へ向かっていた弧爪たち第七小隊と対峙している。この惨状は彼らの戦闘で生じたらしい。
数ではこちらが有利だが、いまだ多くの民間人が散らばるこの東口エリアで大規模な戦闘を再び起こすのはまずい。全員が身動きできないまま月島たちと相対していると、そこに、低く艶のある声が愉快そうに響いた。
「ちょっとォ〜、暴れすぎでしょ〜」
「お前らは国防軍で何を学んだんだ?」
全員が無意識に頼ってしまう、そんな相手の声だ。
振り返ると、黒尾と澤村が並んで東口から階段を上がってきたところだった。さらに南口の方から勢いよく飛んできて、広場に豪快に着地するオールバック。
「ヘイヘイヘーイ!!俺も混ぜてくれるよなァ!!…赤葦ィ?」
やってきたのは木兎で、さらには伊勢丹方向から通りを泰然と歩いてくる菅原、東峰、夜久、海も広場にやってきた。全員、駐屯地にいたはずのメンバーだった。
「隊長ぉ〜!!」
思わず情けない声を出した日向に澤村は苦笑して、そして月島をちらりと見つめる。山本も「夜久さ〜ん!!」と半泣きで呼びかけた。なぜか黒尾の名前を呼ばなかったことに黒尾はぶすっとし、夜久は身長を感じさせない威圧感を醸し出す。
「うるせぇぞ山本!おいリエーフ!!拗らせて洗脳かかってんじゃねェ!!」
ここにいる全員、実戦経験があって弱い者など一人もいなかった。それでも、彼らがいるだけで安心できてしまうのは、彼らが常に前を歩いてくれているからだった。