第三話: The Tokyo's day to burn blue−3


アルタ前広場の東側にある地下街入り口から地下街に入ったリエーフは、そのまま通路を進んで階段を下りていく。階段は高さが非常に低いため、勢い余って頭をぶつけそうになってシールドが発動していた。それに夜久はイライラとしつつ後を追いかける。
丸ノ内線の改札に続く通路でもあり、この先の三丁目交差点方面へと続いて通り沿いの商業施設に直接入れる地下通路は、天井が変わらず低く圧迫感がある。狭苦しい通路を、夜久は黒尾たちを除いた第七小隊のメンバーを率いて走っていく。
戦闘範囲が広がることを予想していたのか、事前に誘導に当たっていたという成田たちは民間人をなるべく通路の奥へと移動させたようで、広場に近い区画には人がいなかった。
通路中央に、細いデジタルサイネージのついた柱が続くあたりまでリエーフが差し掛かると、リエーフはこちらに向けて衝撃波を放ってきた。巻き込まれた左側の壁の看板が次々と落下してこちらに飛んでくる。

それを無造作に孤立空間魔法で避けると、海はリエーフのいるあたりの天井に独立衝撃魔法を展開する。それは天井からリエーフに向けて放たれ、天井パネルが一気に落下した。合わせて、看板や黄色い背景に黒く出口名や建物の名前が書かれた案内板も明かりを消して落ちていく。
柱が一斉に歪んだことでデジタルサイネージもすべて同時に画面が暗くなり亀裂が走り、埃とともに落下する天井パネルをリエーフはシールドで弾いていく。


「芝山、リエーフの足元に反作用衝撃魔法展開。犬岡は天井に孤立空間魔法、海はリエーフに跳ね返ったパネルに独立爆轟魔法」


小声でかつ素早く、噛まないように指示を出せば即座に全員従った。
まず、芝山の反作用衝撃魔法によって落下したパネルが異常に跳ね返りリエーフにもう一度下から向かう。そのパネルに海の独立爆轟魔法が一つ一つ展開されて、さらに天井を犬岡の孤立空間魔法が覆って保護すると、跳ね返ってリエーフのシールド半径の内側に入ったパネルが爆発した。
これ以上天井にダメージを与えると崩落しかねないため保護しながら、パネルによる散発的な爆発をリエーフにけしかける。悲鳴を上げるリエーフを見て、夜久は山本に対してゴーサインを出す。


「行ってこい」

「待ってましたァ!」


山本は足に衝撃魔法を展開させて一気に飛び出すと、煙の中でリエーフを先ほどのように蹴り飛ばす。一瞬だけ呻き声がした後、リエーフは奥へと吹き飛ばされていく。通路の先では、爆発音を聞いて残っていた人々が悲鳴を上げて最寄りの地上への出口に駆け込んでいた。
さらに山本は追撃し、リエーフの水落に重い拳を入れる。声もなく後ろへ飛ばされたリエーフは、丸ノ内線のホームへの入り口を通路とを隔てる鉄柵を突き破って丸ノ内線の改札内に飛び込んだ。
リエーフは激しく咳き込みながら、鉄柵に囲まれた通路中央の丸ノ内線ゾーンから改札を飛び越えて抜け出し、反対側の煌々と明かりが灯る家電量販店への地下エントランスに向かう。
そのエスカレーターの手前で海が爆轟魔法を起こせば、爆発とともにリエーフは足を止めざるを得なくなる。

犬岡が上階へ続く階段とエスカレーターを孤立空間魔法で封鎖すると、夜久はリエーフのところへと走り、そして爆発の衝撃で尻餅をついたリエーフに飛び掛かって馬乗りになった。


「うぐっ…!」

「観念しろバカリエーフ」


首筋に指先を当てると、リエーフの銀髪が床に散る。涙目になって見上げる姿はいつも見ていたもので、その瞳に感情の色がないこと以外は普段通りだった。


「なん、で…夜久さん…伊吹が、こんな苦しい思いしてんのに、救ってあげないんスか…」

「あいつはそれでも、誰かを救う方が大事なんだ。それなら俺たちは、あいつの行く道が少しでも楽になるように協力するべきだろ」

「……俺のこと、助けてくれたのに…俺も、伊吹さんのこと、助けたいのに…」

「じゃあまずはあいつに助けを求められるくらい強くなるんだな。帰ったらそのクソザコ根性叩き直してやる」


そう言って、夜久は近くまで来ていた海に合図を出す。海はリエーフの頭に手を添えて、ごく軽い衝撃魔法によって脳震盪を起こす。くらりとしてリエーフは意識を失った。


「…責任は俺も取るからな」


他の隊員の洗脳魔法が解けてリエーフたち一部のメンバーが解けなかったのは、黒尾の見立てでは伊吹への感情の強さに起因するという。夜久もそれには同意だ。リエーフの弱い部分をきちんとケアしてやれなかったという、世話係としての自分の責任を夜久は少なからず感じているし、そうでなくとも、リエーフがしたことの罪をリエーフだけに負わせるつもりなど元からなかった。


234/293
prev next
back
表紙へ戻る