第三話: The Tokyo's day to burn blue−4
矢巾は背の低い雑居ビルが並ぶ西口側の繁華街・二番街通りにて、通りの駅側の並びに建つ建物が軒並み上階部分を吹き飛ばされているのを見て、それを引き起こした二人を睨む。
背の高い二口と金田一は瓦礫に覆われたプラザ通りに悠然と立っており、二番街通りの破壊された建物の瓦礫を避けてプラザ通りと交差する矢巾の立つところまで来た隊員たちを睥睨する。
「金田一、お前自分が何やってるのか分かってんの」
「国見こそ、伊吹さんがいつまでもこのままひどい目に遭ってていいのかよ」
矢巾の近くまで来た国見は金田一と対峙して声をかけるが、洗脳魔法にかかっている相手では話は平行線だろう。国見自身、先ほど東口側で伊吹に対して攻撃を仕掛け、その際に民間人を多く巻き込んだ。その自責の念がまだ強く心を揺さぶっているところだろうに、大隊内で最も仲の良い相手にこうして敵対することでさらに追い詰められているように見えた。
矢巾はこの第五小隊において、及川が分隊作戦などでいないときに臨時で指揮を執ることもある立場で、この作戦においてもそうしていた。洗脳が解けて南口で突発的に同士討ちが始まったとき、避難が進んでいる西口側に誘導したのは矢巾だ。同じようにこちら側に来ていた昼神や侑は、さらに向こうの超高層ビル街の方へ向かった。
ここにいるのは第五小隊と第六小隊、それぞれ金田一と二口が属する小隊だ。誰にとってもこれは苦しい戦いだったが、それでもことさら仲の良い国見に矢面に立たせたくはなかった。
「……京谷」
「……分かってるっつの。俺は汚れ役なんざ気にしねェしな」
向こうはこちらと違って全力で戦いを挑んでくるだろう。それが洗脳だ。だからこそ、仲間に対して攻撃することを厭わない京谷に矢巾は声をかけた。本当は京谷にだってそんなことはさせたくなかったが、京谷をこの場面で頼ることは京谷にとっても予想の範囲内だったようで、名前を呼んだだけで頷いた。
「渡、小原はこの辺りでの防御、女川、吹上、作並は民間人の避難誘導と保護。青根、黄金川は二口と、俺と京谷で金田一とやる。国見は俺たちの後方支援」
京谷を主力にして、どちらかといえば避難と防御に力を回す。この辺りの繁華街は完全に人がいないわけではないため、戦闘に巻き込まれないよう早急に避難させる必要がある。それまでは、確実に人がいないこの辺りに戦闘範囲を絞って交戦するのだ。渡と小原にはその戦闘範囲の限定のために周囲にコンスタントに孤立空間魔法を展開させる。
国見の水氷魔法は遠隔から狙いを定めてできる範囲攻撃という特殊な立ち位置であるため後方支援、という名目で金田一との直接の戦いから遠ざける。単に、京谷の戦い方が大仰で巻き込まれる可能性があるというのもあるが。
厄介なのは、二人とも攻守ともに強いことだ。特に二口は防御能力もさることながら攻撃力も極めて高い。攻守ともに抜きんでた魔法を使うからこそよく分隊編成に加わっている。
「戦闘要員5人とかナメられたモンだなァ」
矢巾の指示を聞いていた二口は柄も悪くそう言うと、こちらに向けて爆轟魔法を展開した。ほぼノーモーション、ラグなしの展開速度は伊吹も褒めるほどの二口の長所で、それがこうして牙をむくとまったく動けなかった。
攻撃そのものはシールドに防がれたが、一瞬にして爆発の中に巻き込まれ、シールドで視界が塞がれる。近接で不意を突かれる可能性があるため、矢巾は瞬時に姿勢を低くした。
間一髪で、シールドが消えた瞬間に煙の中から二口の長い脚が矢巾の頭上を通過する。蹴り飛ばそうとしていたようだ。二口の方から矢巾をシールド半径に入れてきたこともあり、矢巾はすぐに衝撃魔法を展開して攻撃に転じようとしたが、気付いていた二口は飛びのいて立ち込める煙に隠れてしまう。