第三話: The Tokyo's day to burn blue−5
徐々に煙は晴れていき、矢巾は立ち上がってプラザ通りの方を注視する。
「大丈夫ですか矢巾さん」
すぐ隣に来た国見に「大丈夫」とだけ返す。涼しげな顔立ちは鋭く煙の中を見つめ、拳が強く握られているのが見えた。
「…よりにもよって、各小隊の重要メンバーが洗脳解けないなんてな。やりづらいにもほどがある」
「伊吹さんが洗脳されてたら今頃東京はなくなってますよ」
「…それよりかはマシだな」
国見の言葉に苦笑すると、ようやく煙が晴れて二口と金田一を視認した。あたりを見渡すと、煙の中で二人は戦闘していたようで、女川と渡が瓦礫の合間に倒れていた。
「っ、渡!女川!」
「よそ見っスか」
慌ててそちらに行こうとした瞬間、目の前に金田一が迫った。あまり近接戦闘をするタイプではないが、明確に攻撃しようと殺気を滲ませてすぐそこに迫る。
しかし金田一が矢巾に到達する前に、京谷が思い切り蹴りを放った。シールドに阻まれたが、それにも関わらず衝撃で地面に散らばるブロック片が吹き飛んだ。とてつもない威力は伊吹を追い詰めただけある。
「二口!!!」
そこに、肩が竦むほどの怒声が響いた。珍しく大きな声を出した青根で、二口の前に立ちはだかっている。隣には黄金川もおり、二人並んで二口に対峙していた。
京谷はそのまま金田一との戦闘に入り、二口と青根たちも近接での戦闘を開始する。国見は言われた通り、水氷魔法によるそれぞれのアシストを始めた。
「小原も戦闘フォロー、作並と吹上は交戦区域を制限するために孤立空間魔法を展開してくれ」
「了解」
「分かりました」
所属する部隊は違えど、この状況では指示を出せるのは矢巾だけだ。矢巾は戦闘を他のメンバーに任せつつ、倒れた二人のところに駆け寄った。
「女川悪い、防御要員から回復させる」
「いいって…」
呻くように言った女川に礼を言って、矢巾は渡に回復魔法を発動した。矢巾が手を当てたところから怪我が治っていく。回復魔法は制育魔法の亜種のようなもので、第1魔法科大隊では矢巾と菅原だけが使用できる。
先に渡を回復させなければ、攻撃を食らってこちらがどんどんじり貧になってしまう。
「京谷さん!」
すると、国見の叫び声とともに、金田一の衝撃魔法がもろに入った京谷が吹っ飛ばされた。角に面したコーヒーチェーン店にガラスを突き破って入り、カウンターや椅子を破壊して床に転がる。
「っ、くそ、小原!作並!」
まだ渡の回復は終わっていない。仕方なく矢巾は叫んで指示を出し、小原と作並は意図をすぐに理解して直列孤立空間魔法を展開し金田一を閉じ込める。金田一の魔力量の多さは二次入隊組の中でも抜きんでており、単純なものでは魔力の逆流に勝てず突破されてしまう。
攻撃は最大の防御というヤツで、金田一に攻撃する隙を与えないためにも京谷による攻撃が必要だった。
矢巾は渡の回復を待たずに今度はコーヒーチェーン店に入り、床に転がって呻いている京谷のところに走り寄る。テロの発生によって慌てて人々が逃げ出したために、床にはコーヒーやカバンなどが散乱している。
「大丈夫か!」
「…くっそ、」
矢巾は京谷にすぐに回復魔法を展開する。床に固定されたカウンター席を破壊するほどの強さで叩きつけられたからだろう、内臓へのダメージが大きそうだ。京谷の体に手をかざして早くしてくれ、と焦っていると、爆発音が轟いた。
道路の反対側の建物がほとんど原型を留めずに破壊され、瓦礫の山と化したところに黄金川が力なく倒れていた。青根も出血がひどい。
二口はさらに、金田一を閉じ込める作並と小原に対して、地面の下から衝撃魔法を起こした。地面ごと足元から空中に投げ出された二人は魔法を維持できず、金田一は逆流によって孤立空間魔法を突破する。その逆流の衝撃で、作並と小原は空中で意識を失ってしまった。吹上がフォローに入って二人を助けようとするも、金田一による爆轟魔法で姿が隠されてしまう。