第三話: The Tokyo's day to burn blue−6


圧倒する金田一と二口に対して、もはやこちらで動けるのは吹上と国見、矢巾、青根だけとなった。矢巾は咄嗟に、少し離れた地面に持っていた植物の種を投げつけて制育魔法を使う。急速に成長した植物たちが落下する二人を受け止めてそっと地面に横たえた。
二口はそれを見て、矢巾のトリッキーな魔法を煩わしく思ったのかこちらに敵意を向ける。ここで大規模な魔法を使われるのは逃げ場がないため芳しくない。まずい、と思った、そのときだった。


「そこまでだ二口!!」


これまた聞いたことのない声量で怒鳴った人物がやってくるなり、二口の周囲の地面や瓦礫が内側から弾け飛ぶ破砕魔法が次々と発動していく。
さらに、割れた窓ガラスから見慣れた美形が二人を見下ろした。


「よく耐えたね、矢巾」

「及川さん…」

「国見ちゃんのことフォローに回しながらだと大変だったでしょ。あとは俺たちがやるよ」


続々と現れるのは、濃紺の迷彩服に身を包んだ一つ上の代だった。
二口を取り囲むのは茂庭と鎌先、笹谷で、金田一に相対するのは岩泉、花巻、松川だ。ようやく、国防軍に命令が下って駐屯地から援軍が来たのだ。

及川は矢巾がやっていたことを正確に把握していて、そういうところは本当に敵わないと思いつつ、及川がそういう人物でありその小隊にいることが誇らしくなる。

確かに二口と金田一は極めて強い兵士だったが、茂庭たちや及川たちの強さはまた一線を画す。経験値の差というもので、二口はそこに食い込むレベルではあるのだが、数の有利もあった。

茂庭の可視化魔法と直列展開による瞬時の展開方向の変更、鎌先の怒涛の攻撃の連続、笹谷の意表を突いた鋭い攻撃が二口を追い詰めていき、やがてついに、茂庭が二口のシールド兵器を笹谷との直列破砕魔法によって粉砕し、鎌先が魔力を伴わない純粋な蹴りで二口を沈めた。


一方、及川は花巻、松川、岩泉との直列爆轟魔法を連続させて金田一に攻撃の隙はおろかシールド兵器から顔を出すことすらさせず、爆発で金田一を誘導して外発独立衝撃魔法が展開された地面に立たせると、爆発を止めてシールドが消えた瞬間に発動させた。
その衝撃波によって金田一も意識を失い倒れ、辺りには静寂が戻る。

戦闘を見守りながら京谷への応急処置を済ませた矢巾は、コーヒーチェーン店を出て及川たちのところへ駆け寄る。


「状況はどうなってますか」

「伊吹は無事、ウシワカがついてる。南口で佐久早たちと交戦中。無線で、東口の月島君、赤葦君、リエーフ君も気絶させたって」

「そうですか…」


結局、自分たちも洗脳魔法によって伊吹に迷惑をかけた上に、こうして増援が来なければ勝てなかった。めちゃくちゃになった繁華街を見渡して唇を噛みしめる。
国見は金田一のそばにしゃがみ、憑き物の取れたような顔で気を失う金田一を見て安堵の息をつく。だが国見も、依然として拳を強く握り締めたままだった。


「…今回のことは国防軍全体の問題だ。民間人の犠牲は、伊吹の忠告を聞かずに事前展開しなかった国防軍側に問題がある。最初から俺たちがいれば、もっと早くお前らの洗脳も解けただろうしね」


魔力量が桁外れに多いイニシャルセブンのメンバーが最初から揃っていれば、恐らく洗脳にかからず、かかった者たちをもっと早く解くことができていた。伊吹が追い詰められて、偶然、魔力の乗った声で隊員たちに呼びかけなければ、覚悟を決めてくれていなければ、もっと凄惨な結果になっていたかもしれない。
それでも、自分たちが奪ったもの、失ったものの大きさに、矢巾も国見も口を開くことができなかった。きっと及川は、いや、茂庭たちも含めてここにいる増援組全員が、今日の責任をともに負おうとするだろう。そんな彼らの優しさと強さが、矢巾にはまだ痛かった。


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