第三話: The Tokyo's day to burn blue−7


新宿駅西口から続く地下通路の出口の一つ、中央通りの私鉄系ホテルの前にて、治は倒れた並木道の向こうに立つ双子の片割れと対峙していた。治の背後には角名と銀島がおり、侑の向こう側には赤木とアランと理石がいる。中央通りで侑を挟撃していたのだが、小隊のほとんどの人員でもなお、侑の力が圧倒的だった。
先ほどから繰り返し衝撃波を打ち合っていたこともあって、並木は根こそぎ倒れ、通りに停車する車を押しつぶしている。侑は可視化魔法によって魔力の動きそのものを検知しており、攻撃しようにも展開する前から避けられてしまう。そのうえ、侑の攻撃は驚くほど正確にこちらに当たる。そのため、治や銀島など攻撃に特化した者はすでにボロボロだった。


「あいつの独立魔法が厄介や、こっちの動き誘導されて展開位置に入ってまう」


治はそう低く言って侑を睨む。後ろで銀島が頷いた。


「せやな、かといって遠距離からやと攻撃あたらへん。魔力察知されても逃げられへんくらい近づかな」

「そのくせ向こうは反作用雷電魔法とかいう最悪の魔法使うしね」


こちらの攻撃が雷電魔法となって跳ね返るのだ。もともと反作用で跳ね返ってきた攻撃はシールドで防げないが、雷電魔法は物理的にも避けるのが難しい。そのうえ、爆発や衝撃波から置換された雷電魔法はとても人体が耐えられる電圧ではない。直撃すれば即死しかねないレベルだった。
伊吹ですら、先ほど全員を相手に戦っているときこれを使わなかった。隊員を殺してしまう可能性があるからだ。

北側からは爆発音が連続している。昼神と戦っている、星海たち第四小隊と全員が洗脳から脱した第二小隊だ。その音を聞いて侑はため息をついた。


「ホンマ、話分からんヤツはだるいねん。はよ伊吹んとこ行ってVASNAと合流したいねんけどな」

「何アホ言うとんねんドアホ!」


侑の後ろからアランが怒鳴る。侑はちらりをそちらに意識を向けてから、唐突に衝撃魔法で上空へと飛び上がった。立っていたアスファルトが砕けるほどの強さで空中に飛び出し、そしてホテルの壁面に足をつける。さらにもう一度衝撃魔法を放つと、都庁へと飛び出した。その衝撃でホテルの数フロア分で一斉に窓ガラスが割れ、壁面が崩落してくる。ガラス片と瓦礫が降り注ぐ中、治たちはすぐに侑を追いかけて都庁へと走り出した。


「なんやねんあいつ…!」

「腹立つな…!」


銀島と角名が恨みがましく言いながら後ろからついてくる。侑は都庁の前、都議会議事堂との間の広場に降り立ったようだ。少し先を走っているアランと赤木が一足早く都庁と都議会を繋ぐ部分の下から広場に入った。
だがその直後、広場の入り口が爆発を起こし、二人の姿が見えなくなった。理石はギリギリで立ち止まって爆発に巻き込まれなかったため、後ずさってこちらに合流する。


「入らんで正解やで」


治はそれだけ言ってやってから、煙の中を見守る。恐らく、侑とアランたちが戦闘しているはずだ。
そして案の定、煙の中から突然アランが弾き飛ばされた。アランはまるでゲームのように吹っ飛び、中央通りを挟んで反対側の三角柱の形をしたビルに飛ばされていく。


「アランさんは俺がフォローする」


角名はそう言うと、飛ばされたアランの進行方向に反作用風気魔法を展開した。それによって、アランは風の渦に受け止められて優しく衝撃を殺す。あとは角名が風気魔法ごと地面にアランを下ろすだけだ。
肝心の侑はどこにいるのだろうか、と思った直後、煙から現れた赤木が焦ったようにこちらに大声で呼びかける。


「動くな!!!」


理解より先に赤木の剣幕に全員ぴたりと動きを止める。同時に、赤木は治たちの足元に孤立空間魔法を展開した。足元が真っ黒な板に覆われ、何事かと思った途端、地面から次々とレーザー光線が突き出してきた。地面を貫いて出てくる何本もの光線は、アスファルトから出てきて周囲のビル群に突き刺さり、ガラス片や外壁の瓦礫が降ってくる。治たちは赤木の機転によって事なきを得たが、一歩間違えれば下から光線に貫かれていただろう。
赤木は離れたところからこちらに説明を続ける。


「侑が大江戸線に入ってったんや!地下鉄から光電子魔法展開しとる!」

「はぁ?!なんちゅーえぐい真似してんねんあいつ…!」


治は侑の性悪な魔法の使い方に戦慄する。完全に殺すつもりだ。恐らく侑はこのまま、大江戸線の都庁前駅から丸ノ内線の西新宿駅へと続く地下通路を通り、昼神たちが戦闘している北通りに出るのだろう。昼神とともに、治たちをまとめて叩くのだ。


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