第三話: The Tokyo's day to burn blue−8


地下道のない議事堂通りを通って、治たちは北通りへと向かう。並木道の先に見える前方の大通りでは、昼神たちが激しい戦闘を繰り広げていた。
周囲のビルはすべて漏れなく一度は爆破されているようで、ビルの中腹に空いた穴からはカーペットや配線、ブラインドが垂れ下がり、フロアが崩れて下の階を覆い潰しているのが見える。そして、そうした穴から煙とともに大量の書類が屋外に噴き出していた。
西新宿のビル街全体の空中を舞う書類は、真夏の日差しに照らされて輝きながらゆっくりと地上に落ちていく。それを煩わしく払いのけて走っていくと、昼神と交戦する星海たちがちょうど議事堂通りと北通りの交差する場所に現れた。
星海が放った爆発が昼神の反作用衝撃魔法に跳ね返されて衝撃波となって襲い掛かるのを、治の後ろから追いついていた赤木が孤立空間魔法でガードする。


「大丈夫か星海!」

「赤木さん!あざす!!」


6車線の議事堂通りと7車線の北通りは丁字路として交差しており、議事堂通りはここで終わる。正面には新宿アイランドという、半円筒上の屋根と四隅を削った形の壁面が特徴的な超高層ビルが聳えている。ビルの足元には円柱状のエントランスと、同じく円柱状のアイランドホールがある。いずれの建物もすべて一部が崩落していた。
そのアイランドホールの屋根の上にいた白馬が孤立空間魔法を使って空中を下りてくると、通りを渡ってこちらに合流してきた。これで、治たち第八小隊と星海、白馬、別所が揃った。
さらに、アイランドビルの中腹に空いた穴や、右手に見える側面にX字状の柱が連続するビルの崩れた部分から、第二小隊も次々と現れてこちらに走ってきた。
指揮している白布が治と星海のところまでやってきて、鋭い眼光で昼神を睨む。


「あいつ1人で一国の軍隊分あるだろ。どうなってんだマジで」


治たちが来るまで、第二小隊と第四小隊の計10人でたった一人の昼神と戦い、星海たちは怪我をしてボロボロなのに昼神は傷一つついていなかった。白布は綺麗な顔立ちの頬についた切り傷から出る血を乱暴に拭う。


「天童さんの洗脳は使えないんです?」


銀島は近くに来た天童に尋ねるが、天童は普段のおちゃらけた表情を引っ込めて厳しい表情のまま答える。


「あのレベルの洗脳に上書きすると、最悪あいつの人格壊れちゃうからネ〜。まぁ、殺すよりマシっていうんなら、国防軍から『処分』が命じられる前にやってもいいけど、廃人になったら死んでるのと一緒でしょ?」


相変わらずダイレクトな言い方に銀島は肩を揺らす。これ以上の被害が出るのであれば、確かに殺すことも念頭に置いた命令が下る可能性がある。そういった命令はまだ烏養や武田たち司令部がなんとか抑えているだろうが、時間はあまりない。

そこに、昼神の後ろから金髪が姿を現した。地下通路を通って、流線型の曲線を描く高層ビルであるヒルトンホテルの方から、悠然と侑が歩いてきた。7車線の大きな通りの真ん中に立ちはだかる二人は、白布の言う通り、もはや一兵卒などではなく一国の軍隊に匹敵する強さを持っている。
治は今ここにいるメンバーで太刀打ちできるか思案する。瀬見や大平がいるこちらは戦力として決して劣っているわけではないし、山形や赤木のような防御特化型もいる。星海のように攻守どちらも秀でた者もおり、かなりバランスはとれていた。

しかし、突然昼神が魔力を一気に展開させると、治たちの足元はまるで「勝てないことはない」という前提があっさりと崩れるかのごとく粉々に砕け、突如として大爆発を起こした。大規模な爆轟魔法は丁字路全体を地中から吹き飛ばし、大量の土砂と配管、電線といったものが砕けたアスファルトとともに辺りに降り注ぐ。
地面ごと飛ばされた治たちは土砂の中で分断され仲間の姿が見えにくくなった。足元の衝撃こそシールドで防がれたが、一瞬にして高さ15メートルほどまで治たちは突き上げられていた。


「うおあああ!!!」


銀島や瀬見の悲鳴がどこかから聞こえる。重量に従って、土砂とともに地面に落下していくが、その土砂に魔力を感じたときにはもう遅かった。
侑は可視化魔法によって治たち一人ひとりの周囲の土砂に独立爆轟魔法を展開しており、シールド半径の内側に入った魔法式つきの土砂が、一斉に爆発を起こしたのである。その爆発は小規模なものだったが、顔や腹などを正確に狙い、そして最悪なことに、それぞれのシールド兵器を破壊していた。


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