第四話: Laufet, Brüder eure Bahn−6


伊吹が答えて男性が下がる。再び司会が指名した男性がマイクスタンドに立った。その目もこちらを見ている。


『産業社会新聞の遠野です。朝倉陸尉にお尋ねします。これまで自衛隊は、決して憲法上強い立場ではなかったことから、国民に武器を向けるようなことは断じてないよう細心の注意を重ねて、ついに先の国民投票によって軍となりました。そうした長年の努力をすべて泡に帰す行為であったことについて自覚はありましたか。また、そうした行いをしても自身をめぐる立場から懲戒などになることはないと考えていたのではないですか』


右よりの新聞社から寄せられた質問は伊吹の想定の範囲内だったものだ。落ち着いて答える。


「これまで自衛隊、および今も普通科等の形で活動が続く大部分の陸軍がたゆまぬ努力を続けていたことは理解しています。それを踏みにじる行為であったことも自覚しておりました。懲戒等の処分が自分には科されない、という前提は今回の作戦にあってはありませんでした」


最後は嘘だ。本当はそういう魂胆だった。とはいえ、国連に引き渡される可能性はもともとあったため、それを早めるリスクを考えれば懲戒の方がマシだ。
こちらからの回答に対して質問を重ねることはできないため、記者は下がって別の記者がやってくる。女性の記者だ。


『首都新聞の世良です。朝倉陸尉に質問です。朝倉さんはイニシャルセブンとしてティクリートの実験施設で魔法科兵となったとき、ティクリートを大規模な魔法で破壊し11万人の命を奪いました。ライプツィヒを壊滅させ、今度は新宿を破壊されました。これだけ多くの人命を奪った責任をどう果たすおつもりでしょうか。また、その責任を果たす一環として、CHREUSが主張するような国連施設へのご自身の移送についてはどうお考えですか』


ついに来たな、と伊吹は内心で思った。この手の責める質問は当然来るはずだったし、恐らく各メディアもどこかがやるだろうと考えていたに違いない。こういう手合いは自分の回答できる範疇にはないと答えるべきだ。


「新宿でのことについては先ほどお話しした通りです。ティクリート、ライプツィヒについては作戦行動中のことであり、国連への身柄引き渡しも含め、私の判断できることではございません」

『ティクリートの怪物と呼ばれているようですが、それではご自身では自らを人類に仇なす存在ではなく救済できる存在だとお考えなんですか』

『回答を得られたら下がっていただくようお願いします』


司会に止められ、女性は渋々自席に戻っていった。「ティクリートの怪物」という名前を出すことは、大手メディアでは憚られているようで少しざわついている。
次に指名された男性は外国人のようだった。


『I’m Simon Green from ANC (American News Cooperation). The international laws on magic restrict private and unauthorized use of magic. International society entrusts IMA with their part of sovereign on magic using to prevent the disorder that threatens the world citizens securities. Your action and existence let people feel nervous and made the social status of other country’s magic soldiers weak. How do you consider this fact? (ANCのサイモン・グリーンです。魔法国際法は魔法の私的かつ許可のない使用を厳しく制限しています。国際社会は世界市民と安全保障に脅威与える無秩序を防ぐためIMAに主権の一部を預けているのです。あなたの行動と存在は人々を不安にさせ、他国の魔法科兵の社会的地位を弱くしました。この事実についてどのように考えますか?)』


米国の大手テレビ局の特派員だ。伊吹の勝手な行動、ひいては伊吹の存在そのものが国際社会に対して不利益を与えているのでは、という指摘である。翻訳は一応控えているが、この程度であれば伊吹は自分で回答できる。


「As you mentioned, the result of my military action posed a serious problem to the world. This issue negatively affects all magic soldiers. It is natural that my action should be criticized, however, please do not forget that other magic soldiers have fought for their mother country and keep the best effort to maintain the security of citizen. (おっしゃる通り、私の軍事的行動は世界に対して深刻な問題を提起しました。この問題はすべての魔法科兵に悪影響を及ぼします。私の行動は批判されて当然ですが、しかしながら、他の魔法科兵は母国のために戦ってきて、今も市民の安全を守るべく努力を続けていることを忘れないください)」


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