第五話: Ground-Zero−10
木葉たちと分かれ、菅原と再び北へと飛ぶと、すぐに第二小隊のいるところに到着した。すでに赤葦たちが見つけ出した山形と天童も寝かされており、大平、白布、五色と並んで5名が倒れている。
「お疲れ様です。ここが最後になります」
「早かったな」
瀬見が朗らかに出迎えてくれるが、その精悍な顔には切り傷が滲んでいた。菅原はすぐに治療を開始してる。その顔にはさすがに疲れが見えた。回復魔法はかなり消耗すると聞いている。こういうときに魔力だけでも譲れたらとは思うが、血液のように相手に渡せるものではない。
この場には第二小隊の他に、直井、木兎、赤葦がいる。昼神と星海も向かっていることだろう。
伊吹はちらりと牛島を見上げた。牛島はさすがというかけろりとしていて、特段負傷したようには見えない。
「ちょうど牛島さんと木兎さんいるんで話しますけど。どこからどう攻めます?」
一応、残りのメンバーを率いて立つのは伊吹だ。とはいえ牛島と木兎も小隊長として小隊を率いる立場でもある。意見は聞いてみたが、二人とも意見は同じだった。
「正面突破しかねぇだろ!」
「正面突破しかないな」
「まぁそう言うと思ってましたけど…」
伊吹が呆れて言えば、赤葦から同情の目線をもらう。直井は苦笑していた。ただ、施設の全貌がいまだ掴めない以上はそれもまた一つの手だった。
「中の様子は分からないんだろう」
牛島が確信めいているのは、もし伊吹が施設を透視していればこんなことを聞かずに合理的な方法を提案していたであろうことを踏まえているからだ。
そう、厄介なことに、地下施設はいたるところに孤立空間魔法による隔壁が使われており、中の全体像が見えないのだ。ひとつひとつに先ほどと同じようなギミックが使われていれば厄介だ。
「はい。現状、残ったメンバーで防御要員は4名、あとは第一小隊です。全火力を一点集中でもいいっすけど、分散して攻守揃えて攻めていくんでもいいかなって」
「敵に逃げられる可能性を考慮すれば、そうする方がベターだろう」
牛島が同意すると、直井も頷く。
「俺も分散するべきだと思うぞ。ただ、第一小隊まで分散させる必要はないと思うのと、菅原は地上に残って負傷した兵士を迎えるべきだ」
「そうっすね、第一小隊にはそのままの編成で正面から行ってもらいます。菅原さんと直井さんで負傷者の看護と地下施設の監視を。俺と第二小隊の3名、第三小隊と第四小隊の6名で分かれて、第一小隊と合わせて三方面から突入しましょう」
「異論はない」
牛島はすぐに編成の意図を理解して同意し、直井も否定しない。
木兎は「なんでもいいぜ!」と考えていないように言っているが、伊吹への信頼の現れだろう。あれで意外と考えて反論することも多い男だ。
編成のポイントは防御担当がいること、そして透視担当がいることである。伊吹の戦力差も考慮し、このメンバーとした。牛島と伊吹の火力は確かに極めて高いが、閉塞された地下施設ではむしろ小回りの利く方が良い。
同意を得られたことから、伊吹は無線を繋ぐ。すでに赤葦と木兎は木葉たちと合流するべく南へと歩き出している。
「朝倉より司令部および各隊へ、これより朝倉と第二小隊の計4名、第三小隊と第四小隊の計6名、そして第一小隊の三方面から地下施設に突入する。第一小隊は空軍基地南西から、第三小隊と第四小隊は北西から。第二小隊は東から向かう」
『こちら司令部、了解。施設内は無線が使えない状況が予想される、現場判断を優先するように』
孤立空間魔法が張り巡らされているため、電波が途絶することが多いはずだ。その場その場で判断していくべきだ。
清水からの許可も下りたため、伊吹は牛島たちとともに東へと移動するべく風気魔法を全員の足元に展開する。
「直井さん、菅原さん、あとは頼みます」
「健闘を祈る」
「頑張れよ!」
直井と菅原に見送られ、伊吹は牛島、川西、瀬見の足元に風気魔法を展開させて浮き上がる。
「…じゃあ、行きましょうか」
3人が頷いたのを見て、伊吹は一気に基地の東側へと飛ぶ。いよいよ、施設へ突入するのだ。