第二話: פרו ו:רבו ו:מלאו את־ה:ארץו:כבש:ה−4
「続いて第三小隊"Zao"いけ!!」
いまだ騒がしい木兎たちが下がると、次は第三小隊が出てくる。全体的に厳つかった第一小隊ややかましかった第二小隊と違い、なんだか風格があるように思える伊吹である。
小隊長は牛島大尉、後ろから赤い髪を立たせた天童覚、小豆色の髪の毛先を黒くした瀬見英太、刈り上げの大平獅音、後ろをツーブロにして髪を立たせている山形隼人と続く。
さらにその横に、頼れるお父さん感のある澤村大地、明るい髪色で柔和な顔立ちの菅原孝支、侍のような風貌の東峰旭、小さいながら貫禄ある仁王立ちの西谷夕、そして坊主頭の田中龍之介が並んだ。まるで歴戦の戦士たちのようだが、実際に戦場を経験したのは牛島だけである。
「各員、各個攻撃開始」
牛島の低い声が響くと、各自が少し離れたところに立った山形と西谷に向かって攻撃を開始した。
大平は原始破砕魔法、瀬見は原始爆轟魔法、天童は徴発衝撃魔法を次々と放つ。
爆轟魔法は大規模な爆発のことであり、大平も瀬見も力業だった。一方、天童の徴発魔法というものは、周囲のエネルギーを吸い取って利用する魔法であり、難しいが自身の魔力をあまり必要としない。また、天童は普段は原始洗脳魔法という、相手を洗脳する魔法を使って攪乱する役割がある。
天童周辺の草が枯れたが、「せみせみから取っちゃった〜」と笑っているため、瀬見からも魔力を徴収したらしい。瀬見は呆れていた。
隣の澤村は、「並列爆轟魔法術式展開」と言って魔法の展開を開始した。それに菅原が並列衝撃魔法、田中が並列破砕魔法と続き、最後に東峰が「並列爆燃魔法術式終末展開…!」と思ったよりも低くない声で言って発動した。
その爆発は自然ではあり得ないような爆風と自由な衝撃波、そして強すぎる炎をともなって西谷に向かっていく。
並列魔法は、同じ魔法を複数人で展開する直列魔法と異なり、複数の魔法を複数人で展開する魔法のことである。
猛攻撃を食らった山形と西谷だが、山形は原始孤立空間魔法、西谷は原始反作用衝撃魔法によってすべて防いでいた。西谷は特に、他にも原始孤立空間魔法と独立閉鎖空間魔法を使うことができる、夜久と同様の天才肌だった。
「よし!最後!第四小隊"Mitake"!出てこい!」
烏養が声を張り上げると、最後の小隊である第四小隊が出てきた。
イニシャルセブンという、イラクで人体実験を受けた最初の魔法使い7人は各隊に配属されているものの、この隊は烏養が小隊長のため不在になることも多く、代わりに伊吹が入る機会が多い隊でもある。
烏養以下に、諏訪愛吉、野沢出、上林鯨一郎、昼神幸郎、尾白アラン、大耳練、赤木路成と続き、そして双子の宮侑、宮治となっている。癖が最も強い隊だった。
とはいえ、癖がなければそもそも魔法使いなどに志願しないか、と伊吹は至極当然のことに思い至る。僅かな痛みがあるだけで適性さえあれば魔法使いになる技術が確立され、日本国内でも志願を募って魔法兵の養成を行った。
結果的に、空軍や海軍も含めて10万人が立候補したが、たった30人と少ししか魔法使いにはなれなかった。
そんな人間に癖がないわけがない。
前に出てきた第四小隊は、昼神が煽って侑と治がボケてアランがツッコミを入れるという流れが常で、赤木がそれを茶化し、諏訪や上林、野沢がそれをぼんやり見つめる。烏養はいつものように騒ぎ始めた面々を見て頭を抱えた。烏養が小隊長を兼任している状態ではよくないと考えているのだろう。
「…あれは誰にも手に負えねっすよ」
「そうだよなぁ…」
よく彼らと行動を共にする伊吹が言えば、烏養は諦めたようにため息をついた。「なんでやねん!」という小気味よいアランの声が聞こえてきた。
偶然にも、烏養と溝口と直井を除けば、26の伊吹と同い年の世代である侑や昼神などの代と、1つ上の及川や牛島の代しかいない若手ばかりだった。20代後半にもなって年甲斐もなく騒ぐ彼らに呆れる気持ちも分かる。
しかし烏養が指示を出すと、こちらもやはりさすがに軍隊だけあり、すぐに陣形を組んだ。第四小隊はとにかく全体的な攻撃と防御を行う。
「展開効果干渉術式!いったれみんな!」
さっそく、侑が世界で唯一彼だけが使用できる魔法を使った。このような特殊な魔法は固有名詞がつけられていることが多い。可視化魔法で見てみると、第四小隊全員の足元に複雑な魔法式が浮かぶ。干渉魔法だが、全員の魔法を強化する効果があった。自分の魔法が強くなったように錯覚する、とよく評されている。天才といえるレベルなのだが、いかんせん侑も扱いが難しい兵士だ。
侑に強化され、まずアランが不等価地金魔法を、治が不等価水氷魔法を展開する。いわゆる「元素系」と言われる魔法で、地金魔法は金属と土を、水氷魔法は状態に関わらず水全般を操る力があった。アランの正面から巨大な土の柱が次々と立ち上がり、治はそれを凍らせていく。
さらに、諏訪と野沢が直列等価爆轟魔法を、昼神と上林が直列等価孤立空間魔法を展開した。彼らの等価魔法の精度は異様なほど高い。直列魔法や並列魔法は、魔法が同質的であればあるほど効果が高まるが、彼らは等価魔法によって完璧に均一な魔法を直列させるため、その効果は極めて高かった。
最後に赤木が原始孤立空間魔法によってアランと治の攻撃を無効化し、諏訪たちの直列魔法はそれぞれで相殺しあった。
各自の訓練の成果を発表する場でもあった今回の訓練は、一躍「魔法先進国」となった日本の軍隊に相応しく、あまりに高度なものとなった。伊吹は感心しつつも、次第に近づく魔法を使った戦争に、恐怖感を覚えていたのも確かだった。