第四話: the 2nd Shimonoseki Campaign−4


そこへ、再び警報が鳴り始めた。今日だけで数回聞いた空襲警報だ。大津波警報と同じものを使っているそうだ。人々は警報だけで悲鳴を上げてしゃがみ込み姿勢を低くする。

「注意!!」と上官が叫び、白馬も手を止めて上空を見上げた。遠くから戦闘機の近づく轟音が近づいてくる。南の方からで、すでに対空砲火が始まっているのか、爆発音が空に響いている。しかし音速近い戦闘機に当たるはずもなく、あっという間に門司区上空に差し掛かった。


「来るぞぉーー!!」

「伏せろ!!」


白馬も瓦礫の山から下りて地面にうつ伏せになる。その次の瞬間、観光鉄道に沿って市街地に100メートルにわたって爆発が起きた。連続して8発ほどの爆弾が着弾し、耳を劈くような爆音が轟いた。悲鳴が微かに聞こえ、地面が振動する。すぐに爆風が届き、大きな白馬の体に小石が当たる。さらに頭上で爆発がもう一発起きると、コンクリートが破砕する音とガラスの割れる音が聞こえてくる。顔を上げてみれば、高層マンションにもう一発ミサイルが撃ち込まれたようで、中層部から崩れ落ちていくところだった。内側に向かって沈み込むようにビルの上層部が崩落し、下層階を押しつぶしながら灰色と茶色の煙に包まれていく。崩壊したことによって発生した煙が急速にこちらにも広がり、マンションの正面にあった赤いレトロな建物を飲み込むと、海を渡って白馬たちの周りも包み込む。パラパラと粒が落ちてくる砂ぼこりに包まれて視界は急に悪くなった。

その音がやみ、埃の中に差し込む太陽光が元に戻り始めたところで、上官が白馬を揺さぶった。


「大丈夫か!」

「っ、はい!」

「救護活動をしていたスペースがやられた!いくぞ!」


白馬はすぐに立ち上がり、上官に続いて煙の中を走り出す。茶色い煙の中にはすでに苦しみもがく声や痛みに叫ぶ絶叫が満ちていた。海峡プラザの辺りまで来ると、トロッコ並木道という観光通りは瓦礫に覆われており、捲れ上がった道路のアスファルトが砕けている。そして、ここに広がっていた救護スペースは、医者も看護師もレスキュー隊も巻き込んで、遺体の山と化していた。「助けて」「誰か」「痛い」といった呻き声が瓦礫の中から聞こえてくる。この辺りの爆発による煙と、マンションが崩れたことによる砂埃で、視界は5メートル先はもう茶色くなって見えない。


「なんで、こんな…!」


上官がぐっと拳を握り締める。目の前の光景は、とても日本で見ることになると思っていたものではなかった。すぐに二人は救助活動に乗り出した。上官から離れ、白馬は海峡プラザの建物の壁に沿って倒れこむ人々のところに向かう。その中の3人が、ゆっくりと起き上がるのが見えた。


「っ、おい、大丈夫か?!」


思わず敬語が取れて声をかけた。同じくらいか年下のような青年たちだったこともある。

壁にもたれるようにして何とか起き上がった3人のところに駆け寄る。背の低い男性と、逆にやたらでかい男性二人という組み合わせだ。


「大丈夫か、名前言えるか?」

「…っ、作並、です…」

「吹上……」

「黄金川、です……」


なんとか3人は名前を言えた。意識はきちんとあるようだ。頭も打っていないように見える。少しすれば歩けるようになるはすだ。至近距離で爆発が起きて朦朧としているのだろう。まずはここを離れさせようと辺りを見渡した、そのときだった。


「崩れるぞ!!」


誰かの怒声が聞こえ、慌てて見上げたときには、海峡プラザの壁面が崩れてきていた。砂埃で見えず白馬は気付いていなかったが、建物は内部が崩落し、壁面だけが残っていたようだ。壁が崩れてくるのを見て、咄嗟に白馬は3人を庇う。直後、ヘルメット越しに頭に大きな衝撃が走った。


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